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構造的心疾患に対するカテーテル治療

心房中隔欠損症に対するカテーテル治療

先天性心疾患である心房中隔欠損(ASD)におけるデバイス閉鎖術は、心臓にカテーテルを通し、閉鎖栓を留置する治療法です。体に負担の少ない低侵襲治療であり、外科手術に比べて胸部に傷がない、痛みや苦痛が少ない、入院期間が短いといった利点があります。

当院では、小児科医、麻酔科医、外科医、内科医、看護師、臨床工学技士、放射線技師など、多くの人が係わり、ハートチームで治療にあたります。治療の可能性を高め、治療に伴うリスクを低減し、安全かつ有効な治療の実現を目指しています。

1. 心房中隔欠損症とは

左心房と右心房を隔てている心房中隔という壁に欠損孔が残っている病気です。もともと、生まれる前は多くの方が左房と右房の間に交通がありますが、生まれるときにその交通は自然に閉鎖します。しかしその過程に異常があると欠損孔が残る場合があります。

欠損孔からの血液の漏れが多いと、将来的に心不全 (ポンプ機能不全)、不整脈(脈の乱れ)、肺高血圧(肺血管の劣化)が起きてくる可能性があります。この、将来起こりうる様々な問題点と治療を行うことのリスクを考えて、私たちは治療方針を考えていきます。

2. 本治療の目的と方法

心房中隔欠損症に対しては、これまで外科的に治療を行っていましたが、2005年より日本でもカテーテルによる治療が承認されました。カテーテル治療は体への侵襲が手術に比べ低いため、次第に多くの患者さんが受けるようになり、2014年には本邦での治療数が5000件を超えるまでになりました。

しかし、欠損孔の大きさや位置などにより、留置による合併症のリスクが高くなる場合はカテーテル治療ができません。また、1980年代からら行われている治療ですが、さらなる長期的な成績に関しては未知の部分があります。本邦では心房中隔閉鎖AMPLATZER Septal OccluderまたはAMPLATZER Cribriform Occluder、Figulla FlexⅡ、Gore CARDIOFROM ASD Occluderが用いられています。

3. 実際の手技

  1. 足の付け根の静脈にデリバリーシースという管を挿入して、右心房側より欠損孔を通し、左心房側に近づけます。
  2. 左心房にあるカテーテルの先端までオクルーダーを進めて、左心房側のディスクを開きます。
  3. オクルーダーの中心部まで広げて欠損孔(穴)に近づけます。
  4. オクルーダー中心部の位置に合わせます。
  5. 右心房のディスクを開きます。
  6. オクルーダーが確実に留置されたことを確認した後、ケーブルとの接続を解除して治療が終了となります。  

4. 治療の予定

この治療は、カテーテル室、または手術室にて全身麻酔下で行います。当日は食事や水分摂取に制限があります。治療時間により異なりますので、主治医・看護師の指示にしたがってください。病棟で点滴を行い、カテーテル室へ移動します。

カテーテル室入室後に気管挿管、人工呼吸器管理、静脈点滴、動脈圧モニター、尿道カテーテル留置、経食道エコーを行います。治療終了後は覚醒後に気管内に入っていた人工呼吸用の管を抜きます。呼吸、循環が安定したのを確認して移動します。状況に応じて、病棟または集中治療室で心電図、血圧等をモニターします。

治療時間は1-2時間で治療による切開は足の付け根に3㎜程度で済みます。通常、術後は2-3日の経過観察をして、退院が可能です。

治療後は、6か月間のアスピリン内服(抗凝固薬を内服している方は異なることがあります)。また、感染性心内膜炎予防のため、歯科治療などの観血的手技の際は抗生物質の予防投与を行います。

5. カテーテル治療以外の選択肢ー右開胸内視鏡併用心房中隔欠損閉鎖術

解剖学的にカテーテルデバイス留置が困難場合には、従来の胸骨切開術より低侵襲な治療として、Minimum invasive cardiac surgery (MICS)があります。約5㎝の皮膚切開で行う右開胸内視鏡併用心房中隔欠損閉鎖術で、心停止下に直接閉鎖あるいはePTFEパッチを用いて心房中隔を縫合閉鎖術します。小さな傷なので翌日から歩行開始、早期退院(約1週間)、早期社会復帰(退院後から)が可能となり、患者にやさしい治療です。
文責:循環器センター心臓血管外科 診療部長 藤井毅郎

6. ハートチーム診療

近年は医学の発展により、生まれつきの心臓病(先天性心疾患)を持った患者さんの95%が20歳を迎えるようになりました。
しかし、成人先天性心疾患患者さんは経過の中で、疾患の多様性、妊娠、出産、社会復帰、成人病合併等が問題になることがあります。

従来の枠組みからなる単一の診療科による診察では解決できないことが少なくなく、多くの成人先天性心疾患患者さんには多職種ハートチームによる多面的かつ包括的な診療体制が必要です。

東邦大学医療センター大森病院は、成人先天性心疾患患者さんに対して、より良い診療を提供するために循環器内科、小児科、小児外科、心臓外科、産婦人科、麻酔科、看護師、ソーシャルワーカー等で構成される多職種連携ハートチームを作り、月1回のカンファレンスを行っています。そこでは心房中隔欠損を患った患者さんがより良い人生を送るにはどうしたらいいのか、治療に関する話のみならず、Life time managementとして議論を交わしています。

成人先天性心疾患診療チーム

循環器内科

小児科

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