#4 妊娠検査薬ー本当に妊娠がわかる?

妊娠検査薬は何を検査しているの?

ドラッグストアで手に入る妊娠検査薬も病院で妊娠反応を調べるために使う検査薬もどちらも原理は同じです。
女性が妊娠すると血液中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)濃度が上昇します。このhCGが腎臓で尿中に排泄されるので、結果的に尿中のhCG濃度が上昇します。
この尿中のhCGが陽性か陰性か、ということで妊娠しているか否かを判定します。
つまり、厳密に言えば、「妊娠している」という判定ではなく、「尿中のhCGが陽性」ということを判断することになります。

尿中のhCGが陽性ってどういうこと?

hCGは、胎盤の絨毛という組織から分泌されるホルモンです。
つまり、卵子と精子が受精してできた受精卵が、卵管内を移動して子宮内に着床し発育を始める過程で、胎盤が形作られるようになり、その段階で産生されるホルモンです。
ただし、受精卵が着床する前にもすでに絨毛を作る細胞からhCGが分泌され始めるので、すでに着床する前からhCGを検出することは可能です。
多くの妊娠検査薬は、25 mIU/mL、もしくは、50 mIU/mLの濃度のhCGがあれば陽性となるようになっています。
つまり、尿中hCGが陽性ということは、原則的には、受精卵ができたか、すでに着床が終わり、受精卵が成長・発達し始めたことを示しています。

陽性ということは妊娠しているってこと?

hCGは、受精卵もしくはその後の胎盤(絨毛)から分泌されるホルモンです。
hCGがヒト絨毛性ゴナドトロピンと名付けられていることからも、絨毛から出ているんだ、と理解できます。
ただし、正常な子宮内の妊娠でも、子宮外に着床する異所性妊娠(子宮外妊娠)でも陽性になります。
また、胞状奇胎という、以前は「ぶどう子」と言われていた異常な妊娠でも陽性になります。
ただし、ほとんどの場合が、上の3つの状況のため、陽性となれば、「どういう状況であれ妊娠している」と考えられるため、妊娠検査薬として市販でも手に入る状況になっていると思われます。

化学流産とは

化学流産(Chemical abortion)という言葉があります。
これは、受精卵はできたけど、子宮内に着床に至らずに経過した、という状態です。
上で述べた、25 mIU/mLという低濃度でもhCGが陽性になるキットを使うと、着床前に陽性になることあります。
残念ながら着床しなかった場合、結果的に無症状で次の月経を迎えるわけですが、このような一時的にhCGが陽性になったことを化学流産という名称で呼ぶことがあります。
厳密には、着床した受精卵が育たない流産とはことなるため、正式には流産としては取り扱いません。
受精卵は、概ね2−3割の着床率ですので、女性が自覚しない状態で、「化学流産」となっている可能性はあるかもしれないですね

腫瘍マーカーとしてのhCG

hCGが陽性となった場合、ほとんどの場合、何らかの妊娠の状態であると考えられますが、妊娠ではない状況が稀に含まれます。
代表的なものが絨毛性疾患と卵巣腫瘍です。
絨毛性疾患とは、胞状奇胎といった異常妊娠、正常妊娠や流産の後に胎盤組織の異常増殖などによって起きる「絨毛」に関連した疾患で、代表的なものに絨毛癌が挙げられます。hCGの上昇による発見、その低下の程度で治療効果判定を行います。
卵巣腫瘍の中では未分化胚細胞腫瘍という比較的若い女性に多く腫瘍があり、卵巣腫瘍の精密検査の過程でhCGが上昇していることでその存在が予想されます。

妊娠検査薬をが市販されていることの意味

わたしがまだ若い頃、市販の妊娠検査薬の販売が認められました。
妊娠検査薬が一般的に手に入りやすくなることの意義として、早い段階で妊娠がわかる、ということです。
正常であれ、異常であれ、早い段階で病院へ受診できるようになったことは大きな効果があるといえます。
また、「陰性」であれば、妊娠していません。
がん診療で用いる腫瘍マーカーは、陽性でもがんと言えない場合も多く、陰性でもがんではないと言えません。もしそんな腫瘍マーカーのキットを市販したら世の中は大混乱に陥ります。
一方、妊娠検査薬は、陰性だけど実は、ということはありません。
妊娠検査薬の確実性が市販の後押しをしたんだろうな、と思っています。

投稿者:教授

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