#1 妊娠中のエクササイズについて
2022年05月31日マタニティスイミング、マタニティビクス、マタニティヨガなどといった言葉を目にしたことはあるしょう。
妊娠中にエクササイズ(運動)することは可能なのでしょうか? ブログ第1弾としてこのことについて書いていきたいと思います。
妊娠中のエクササイズは、妊婦さんが合併症を持っていなかったり、妊娠経過に異常をみとめなかったりすれば、流産や早産などの合併症を引き起こすことはないと言われています。
ただし、どのような合併症や経過の異常では避けるべきか、どの程度、どのような運動であれば大丈夫なのか、これから解説していきます。
エクササイズを避けるのはどんな妊婦さん?
妊娠中の運動を避けた方がよい妊婦さんに該当するのは以下にあてはまる人です。
・元々、心臓や呼吸器系の合併症のある方
・双子、三つ子といった多胎妊娠の方
・早産予防のために、子宮頸管縫縮術を受けた方
・前置胎盤と診断されている方
・妊娠高血圧症候群と診断された方
・重症の貧血の方
これらの妊婦さんでは、妊婦さん自身の合併症が悪化したり、早産のリスクが高まる可能性があるのでお勧めできません。
エクササイズにはどんな効果がある?
妊娠中の適度なエクササイズには以下の効果があると言われています。
・腰痛の予防や軽減
・便秘の改善
・妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群と行った妊娠によって引き起こされる妊娠合併症のリスクの減少
・帝王切開分娩のリスクの減少
・妊娠中の適切な体重増加の維持
・身体能力の向上
どの程度運動をするのがいいの?
妊婦さんの場合、一週間に、適度(中等度から強度)の有酸素運動を少なくとも150分以上行うのがよいとされています。
有酸素運動とは、息が切れない程度の運動で、中等度というのはエクササイズをしながら普通には話ができるけど、歌うのは少しつらいな、という程度です。
「強度」と書きましたが、息が上がるのでは、有酸素ではなく無酸素運動になりますので注意してください。
具体的には、ゆっくり歩くのではなく、少し速く歩くといった程度です。
一週間に150分といっても、一度に150分行うのではなく、例えば、30分×5回=150分 ですので、日頃から30分ぐらい早歩きをしようかな、というのがお勧めです。ただし、妊娠する前に全くエクササイズを行っていなかった人が、急に30分というのはお勧めしません。5分程度から初めて徐々に増やすことをお勧めします。
ちなみに妊娠前から定期的にエクササイズをしていた方、スポーツ選手の方などは、極端に練習量を落とす必要はないと言われています。
どんな運動はOK? 何はだめ?
妊娠中に推奨されるエクササイズ としては以下のものが挙げられます。
・ウォーキング:少し早歩きかな、というのがお勧めです
・スイミング:マタニティスイミングは、かなり以前から導入されているもので、水の中に入ることで浮力を得ますので、筋肉や関節の負荷を減らし故障を防ぐ効果もあります
・エアロバイク:ステーショナリーバイクとも言われますが、ジムなどにおいてある固定したバイクです。転倒の恐れがないため安心してバイクを漕ぐことができます
・ヨガやピラティス:妊婦さん用にアレンジされたヨガやピラティスは、妊娠によって変化する姿勢に対して体のバランスを保つのに役立ちます
妊娠中に避けるべきエクササイズ は以下のものが挙げられますが、さすがにあえてやってみたいと方は少ないでしょう
・コンタクトスポーツ;体の接触がある球技(バスケット、サッカー、フットサルなど)、ボクシングなど格闘技
・スカイダイビング:気圧の低い、低酸素の環境になるので胎児への影響が出ることがあります
・転倒の危険の高いスポーツ:スキー、サーフィン、オフロードバイク、体操、乗馬など
・ホットヨガ・ホットピラティス:熱中症を引き起こす可能性があるので、「ホット」は避けてください
・スキューバダイビング
マイオピニオン
私が医師になった頃(30年ぐらい前)は、妊婦さんにあえて運動をしましょうという風潮もありませんでしたし、妊婦さんの中にもたまにスイミングやマタニティビクスをする方いたぐらいでした。
妊娠していようがそうでなかろうが、適度なエクササイズを常日頃から心がけることがよい効果をもたらすというのは、その頃はそうも思いませんでしたが、今では、不思議なことではない、と感じています。
また、徐々に、妊婦さんの高年齢化が進んでいます。常日頃からエクササイズに心がけ、妊娠中にも適度にこなすことで、産後の回復を早め、子育てに取り組むことができるのではないかと思っています。
投稿者:教授
カテゴリー:医学・医療