#20 妊婦健診について(2)血液型

血液型とは

#19 妊婦健康診査について(1)で、妊婦健診とはなにか、というお話をしましたが、今回から妊婦健診の検査項目について解説していきます。
妊娠が確定すると,妊婦健診が始まります。
妊娠初期に行う血液検査には,様々な種類がありますが,血液型と“不規則抗体“のチェックを行います。
以前は,うまれた赤ちゃんの血液型を調べることもありましたが,今は調べない施設が大半ですので、「親子鑑定」のために調べているわけではありません。
なぜ,血液型と不規則抗体を調べるのか,これから解説します。

血液型とは

 血液型とは,赤血球の表面にある抗原のタイプ(型)のことをいいます。
一般的には,
A型,B型,AB型,O型の4種類で表現されるABO式血液型
Rhプラス,Rhマイナスなどと表現されるRh式血液型
がありますが,実際には,300種類余りの血液型の分類があります。
ただし,通常の医療で問題となるのは,ABO式の血液型とRh式になります。
ちなみに,赤血球表面にA抗原があればA型,B抗原があればB型,A抗原とB抗原とがあればAB型です。
O型は,「O抗原」があるのではなく,「ゼロ」つまりA抗原もB抗原もない,ということです。

Rh式

 Rh式の分類の場合は,C, c, D, E, e型の5種類が代表的な血液型です。

一般的に,Rh陽性,Rh陰性 と言いますが,これは,RhD陽性,RhD陰性というのが正式な言い方になります。
母子手帳の妊婦さんの血液型の欄には,残念ながら,RhDとは書かれてなく,単にRhと書いてありますが、これはRhDのことです。
ちなみに日本人の場合、RhD陰性の割合は0.5%、つまり200人に1人です。

血液型不適合妊娠とは

母体の胎児の血液型が異なり、しかも、そのために胎児の赤血球が壊されて、胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)を起こす可能性がある状態を血液型不適合妊娠といいます。
これを図を用いて解説します。

母親にはない X型という血液型を胎児がもっていると仮定します。
その場合、胎児の赤血球表面には X抗原があります。
この胎児赤血球が母体の血液中に流れ込むと①、母体は自分にはない抗原が体内に入ってきたので免疫反応を起こして、Xに対する抗体を作ります②
この 抗X抗体を「不規則抗体」と呼びます。
この抗体が、胎盤を通じて胎児の血液中に貼ります③
そうすると、抗体が胎児の赤血球のX抗原を攻撃します④
攻撃された赤血球は、膜が破壊されて、溶血という現象を引き起こして赤血球は失われます。

この状態が悪化した状態が、胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)です。

血液型不適合妊娠を見つけるために

上のお話では、血液型不適合妊娠がおきるメカニズムを説明しました。
多くの妊娠では、1回目の妊娠で作られた 不規則抗体 が、その妊娠の時に胎児のHDFNを引き起こす可能性は低いです。
ただし、いったん免疫反応を起こしているので、2回目の妊娠の時に、同じように胎児の血液型がXだった場合、妊娠初期から母体の抗体がたくさん作られるようになり、その抗体が胎児血液中に移行して、胎児の赤血球を破壊することになります。
そのため、妊娠初期の血液検査をする場合は、血液型と共に
間接クームス試験 もしくは、不規則抗体検査
を行います。
間接クームス試験は、不規則抗体を見つけるための検査法の名前ですので、そのまま間接クームス陰性とか陽性といった結果の表し方の場合もありますし、不規則抗体陽性、陰性といった結果の記し方もあります。
もしこの結果が陽性だった場合は、どのような種類の抗原に対する不規則抗体なのかを調べることで、妊娠中にHDFNになりやすいのか、なりにくいのか、の鑑別ができるようになります。
ちなみに、血液型は、ABO式とRh式(厳密にはRhD陽性か陰性か)を調べます。
あらかじめ血液型がわかっていることで、分娩などの際に出血した場合、迅速に輸血を行うことが可能となります。
RhD陰性だった場合については、後日、解説したいと思います。

投稿者:教授

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