現場から届く 看護のものがたり

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現場から届く 看護のものがたり

「現場から届く 看護のものがたり」は、東邦大学医療センター大森病院の看護師が日々の実践の中で感じたことや学びを、エッセイ風につづるコラムです。
患者さんとの関わり、チームで支え合う場面、心に残った一言——。
看護の現場で生まれた“ひとつひとつのものがたり”から、私たちが大切にしている看護を感じていただければ幸いです。

第1回

できる方法を一緒にみつける

壮年期のAさんは下肢潰瘍で手術を受け、退院後も創部の処置が必要な方だった。自己処置の指導の日、「足の裏が見えづらい。適当じゃだめ?」と聞かれ、私はどう答えてよいか分からず戸惑った。正しく処置を続けてほしい私の気持ちと、Aさんの「自分の感覚で処置ができればよいと」いう考えやAさんが感じた処置の困難さに対して、どのように関わればよいのか迷ったからだ。
一人で抱えきれず他の看護師に相談すると、「鏡を使うと見えるかもしれないよ」と助言をもらった。一緒に試してみると、「見えるね」とAさんの表情が和らぎ、自分で処置を進めることができた。
この経験から、患者さんにとって“できる方法”を一緒に考えることの大切さを学んだ。迷ったときこそ周囲に頼りながら、その人の退院後の生活を見据えた看護を大切にしていきたい。(内科病棟1年目 Jさん)
できる方法を一緒にみつける ※イメージイラストです。

“できる”を支えるために

外来では、一人ひとりの患者とゆっくり向き合う時間を確保することが難しい。それでも私は、患者の希望に寄り添いたいと考えながら働いている。

十数年来、皮膚炎と向き合ってきたOさんは、新たに自己注射での治療を始めることになった。しかし初回の注射後、「怖くて見られない。自分では打てない」と強い不安を口にされた。独居であるOさんにとって、自己注射の習得は今後の生活を支える大切な力になる。私は、恐怖心を和らげながら“自分でできる”感覚を積み重ねていくことが必要だと考えた。
そこで、仲間の看護師に協力を依頼し、Oさんと関わる時間を調整した。痛みを軽減するために保冷剤を使用し、まずは私が実際に注射をする姿を見てもらった。手順を一つずつ確認しながら、「触れる」「持つ」「当てる」と段階を踏み、繰り返し練習を重ねた。
数回目の練習後、「これならできそう」と話されたOさんは、次回の受診時には「自信がついた」と笑顔を見せてくださった。その表情から、自分の治療を自分で支えていこうとする力を感じた。患者の生活を見据え、必要な支援をチームで整えながら、その人の“できる”を引き出していくことも、患者の希望に寄り添う看護の一つだと感じている。(外来看護師 Tさん)
“できる”を支えるために ※イメージイラストです。

“たっぷり”を伝えるということ

糖尿病看護に携わっていると、「痛みがないから大丈夫だと思った」という言葉の重みや背景を考えることがある。

Bさんは糖尿病性壊疽を患っている。潰瘍は気づかないうちに進行していた。「こんなになるとは思わなかった」と話す姿から、病気とともに暮らしていく難しさを改めて感じた。

退院後も生活を続けていくためには、処置や血糖管理の技術だけではなく、“自分の身体に関心を向け続けること”が何より大切である。私は創部処置のたびに一緒に足を観察し、保湿剤の量や皮膚の変化を繰り返し伝えた。

“保湿剤をたっぷりつける”
皮膚の保湿は皮膚の保護のために重要な処置である。
でも“たっぷり”とはどの位なのだろう?
私たち医療者にとっては当たり前のことであっても、
患者さん目線に立つと曖昧な表現であることに気づく。

私は、Bさんに「ティッシュが貼りつくくらいたっぷり」と伝えた。
「初めて聞いた」と驚かれたBさんは、
その後は十分な保湿剤をつけられるようになり、少しずつ自分の足を気にかけるようになっていった。

看護は、治療を支えるだけではなく、その人が自分の生活を守っていく力を育む関わりなのだと、改めて教えられた経験だった。(内科病棟 Kさん )
“たっぷり”を伝えるということ ※イメージイラストです。

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