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酒は飲んでも飲まれるな

お酒は、わたしたちの生活とは切り離せないものです。日常生活の行事には、1年中お酒を飲むイベントがいっぱいあります。たとえば、お正月、新年会、歓送迎会、お花見、夏祭り、忘年会、クリスマス…生活を彩るさまざまなシーンで私たちはお酒とつきあっています。食の楽しみを広げ、生活に潤いを与え、ココロの距離も近づけてくれます。
お酒には、血圧の循環を促進し、精神的なストレスを緩和する働きを持っていますが、お酒の効用をしっかり活かす為には、適度に摂る事が必要です。飲みすぎで体調をくずさないように、健康的な飲み方を知っておきましょう。
お酒を飲むと「酔っぱらい」状態になりますが、このとき体や脳に影響を与えているのはアルコール(エタノール)です。お酒を飲むと、体内に吸収されたアルコールは肝臓へ運ばれます。そこでアセトアルデヒドと水素に分解され、さらにアセトアルデヒドは酢酸と水素に分解されて最終的に炭酸ガスと水になって体外へ排出されます。ここで登場したアセトアルデヒドが血液中に増えると「酔っぱらい」状態になります。
肝臓は、栄養分などを取り込んで体に必要な成分に換えるという、代謝の働きをもった重要な臓器です。また、不要な物質を解毒し胆汁に排泄する働きもしています。ところが、アルコールの飲み過ぎにより肝臓の処理能力を超えてしまった場合は、肝臓内に中性脂肪がたまってしまいます。これが脂肪肝です。肝臓に脂肪がたまってくると、肝臓そのものの機能が果たせなくなってきます。それなのに、同じようにお酒を飲み続けると肝細胞が線維状になり硬くなってしまう肝硬変になり、さらには動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病の原因になってしまいます。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるガマン強い臓器ですから、症状が出てからでは遅く、早期発見が大切です。したがってお酒を常習的に飲んでいる方は、症状がなくても定期的に血液検査を受けるようにしてください。肝臓病の早期発見には血液検査を行ないますが、代表的な検査項目としてはγ-GT(γ-GTP) 、AST(GOT)、ALT(GPT)があります。
肝臓ともっとも関わりが深く有名なものはγ-GTです。γ-GTは、肝臓や胆管の細胞がどれくらい壊れたかを示す一つの指標になります。特にアルコール性肝障害や、胆石で胆道がふさがれたときに数値は上がりやすいと言われています。γ-GT値が高いと、それだけ肝臓などが破壊されている、という証拠になるのです。
ASTとALTは、どちらもタンパク質を分解してアミノ酸をつくる酵素で、これらはほとんど同じ働きをするのですが、ALTのほとんどは肝臓に存在するのに対し、ASTは肝臓だけでなく、腎臓や赤血球、心臓や手足の筋肉などにも存在するという違いがあります。アルコールの飲み過ぎにより肝細胞が壊れ、細胞膜の透過性が増すことで、血液中に酵素が流れ出し、数値があがります。肝臓に異常があった場合は、ほとんどの場合両方の数値が上がりますが、ASTの数値だけが上がって、ALTの数値が上がらない場合は、心筋梗塞や筋肉の組織が壊れたなどが考えられます。肝臓において、ALTとASTの数値を比べると、脂肪肝や慢性肝炎の場合はALTがASTの数値を上回り、症状が肝硬変に進行すると逆転してASTがALTを上回ることになります。
肝臓がダメージを受ける前に、自分の血液検査の値がどれくらいなのか、自分の肝臓がどういった状態なのかを認識し、正常値を上回っている場合は病院に行くようにしましょう。そのときは禁酒も覚悟しなければならないかも知れませんから、日頃からアルコールの量には注意して自分で自分のカラダをいたわってあげるようにしていきましょう。
「酒に十の得あり」と言います。十の徳とは独居の友、万人和合す、位なくして貴人と交わる、推参に便あり、旅に食あり、延命の効あり、百薬の長、愁いを払う、労を助く、寒気に衣となる。
とはいえ、好きなお酒だからこそ、節度を守り健康的に楽しむことを心がけましょう。

血清検査室 大須賀