検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部

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深部静脈血栓症

早いものでもう年の瀬ですね。少しずつ景気の回復の兆しが見られ、年末年始、久しぶりに遠出しようと計画を練っている方も多いかもしれません。そこで今回は、エコノミークラス症候群という名で有名になった「深部静脈血栓症」についてお話しようと思います。

<身体中を巡る血液の旅>

私たちの体内では心臓がポンプのように働き血液を身体中へと送り出しています。心臓から出ていく血液(動脈)はその流れに沿って指の先まで運ばれますが、指の先まで行った血液(静脈)は自力で心臓へと戻る力を持ちません。代わりに手足を動かしたときの筋肉の動きなどによって心臓へと押し上げられます。すなわち、手足を動かしにくいような状況下では静脈の流れは滞りやすくなります。

<静脈が詰まる病気>

静脈の流れが滞ると、血管内で血の塊(血栓)が出来る事があります。小さな血栓は体内で自然と溶けるのであまり問題になりませんが、長時間身動きが取れないような状況下ではしばしば大きな血栓が形成されます。特に脚の静脈で形成された血栓が、血管壁から剥がれ、血流に乗って流れ着いた先の血管を詰まらせる病態を「深部静脈血栓症」と言います。血栓が肺に流れ着くと肺血栓塞栓症、いわゆるエコノミークラス症候群を引き起こす原因となり、命を落とす可能性もある怖い病気です。

<どうやって分かるの?>

深部静脈血栓症が疑われる場合、検体検査としては「Dダイマー」という項目が重要です。Dダイマーとは私たちの体の中で血栓そのものが溶かされた時に生じる物質であり、この数値が高い場合、たくさん血栓が溶かされている=たくさん血栓が存在している状態である事を意味します。
逆を言えば、Dダイマーが正常値なら血栓は存在しないという事が言えますが、そのためには極めて微量なDダイマーを測定出来る試薬の開発が必要であるとされていました。研究が進んだ今では、望まれていた新たな試薬が開発され、今後Dダイマーが深部静脈血栓症ではない事を確認するための有用な指標となる事が期待されています。

<手足を伸ばす習慣を>

深部静脈血栓症はストレッチをするなどした予防が非常に有効です。日常生活の中のふとした瞬間に、手足を伸ばすような習慣を心掛けましょう。

血清検査室 上村三奈