検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部

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肺炎と肺炎球菌

冬になり風邪をひかれる方も多くなったことと思います。「こじらせて肺炎にならないように・・・」とは昔からよく言われています。

~肺の役割と肺炎~

肺の主な役割は、酸素を取り込み、炭酸ガスを排出するといった呼吸によるガス交換ですが、この肺が、さまざまな原因によって炎症を起こしてしまった状態が肺炎です。肺炎の症状としては、発熱、咳、痰、胸痛、呼吸困難などが挙げられますが、そうでないこともしばしばあります。高齢者に多い肺炎ですが、発熱は高齢者では出ないことがよくあり、食欲不振で病院に行って検査をしたら肺炎で即日入院・・・ということもありますので、特に注意が必要です。
肺炎のうち、病原性微生物によって引き起こされるものを、感染性肺炎と呼び、 病原性微生物の種類によって、細菌性・ウイルス性・真菌性などに分類されます。
風邪に引き続いて起きる肺炎(続発性肺炎)は、一般的には細菌性肺炎で、「こじらせて肺炎に・・・」という場合がこれに該当し、主な原因菌は肺炎球菌という細菌です。

~肺炎球菌と検査方法~

肺炎球菌はヒトの鼻や喉に常在しており、肺炎のほか、中耳炎・副鼻腔炎・気管支炎・髄膜炎などの病気を引き起こす原因にもなります。肺炎球菌は病原微生物なので、これらの病気を疑った患者さんの痰や鼻腔拭いなどの検体で微生物検査を実施します。検査室ではこれらの検体をスライドガラスに塗抹し、グラム染色を行って肺炎球菌がいるかどうか、顕微鏡を使って確認します。肺炎球菌はろうそくの炎のように一端がやや伸びた小さな形のグラム陽性球菌で、双球状に対をなしています。顕微鏡検査の他にも目的の細菌を増やして確認する検査(培養同定検査)を行います。肺炎球菌の集落は、血液寒天培地でα溶血の緑色環を形成し、自己融解のために中央がくぼんでいるのが主な特徴です。
肺炎は生死にかかわる怖い病気ですが、肺炎球菌が培養同定検査で検出されるまでには、2~3日と時間がかかるのがもどかしいところです。そこで近年では、尿を用いた肺炎球菌の迅速検査も行われています。肺炎球菌は特有の膜(莢膜)を持っており、尿に排出される莢膜抗原を特異的に認識する抗体を用いたイムノクロマト法で検出するもので、15分で検査結果が得られます。これならばすぐに肺炎球菌の存在を確認することができます。

~肺炎の予防~

近年は抗生物質が効かない薬剤耐性の肺炎球菌も増えており、治療も難しくなっています。テレビのコマーシャルでも流れていますが、肺炎を予防するため、肺炎球菌ワクチンというものがあります。乳幼児や高齢者、免疫機能が低下している人などは特に注意が必要な方々は、ワクチンによって病気をあらかじめ予防することが、以前にも増して大切になってきています。

微生物検査室 前原千佳子