検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部
 
コラム ~検査にまつわるお話です~
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マラリアのお話し

マラリアは、熱帯・亜熱帯を中心とした地域に広く分布しています。最近の日本からの当該地域への渡航者増加に伴い、当検査部でもマラリアに関する検査依頼が増えています。
マラリアは、原虫を保有したハマダラ蚊に吸血される際、蚊の唾液と共に感染型原虫が血中に侵入することによって感染します。吸血によって血中に侵入した感染型原虫は速やかに肝臓に移行し、肝細胞内で1週間から1カ月かけて増殖します(潜伏期)。増殖した娘虫体はやがて肝細胞を破壊し、再び血中に出て赤血球に侵入してヘモグロビンを餌とし、栄養体・分裂体へと成長し増殖します。成熟した娘虫体達は一斉に赤血球を破壊、血中に出た虫体は別の赤血球に侵入して増殖を繰り返します(無性生殖)。無性生殖を繰り返しているうちに、一部の原虫は雌雄の生殖母体に成熟します。これが、吸血と共に蚊の体内に入って受精し成長し、感染が繰り返されていきます。
人に感染するマラリアは、熱帯熱・三日熱・四日熱・卵形マラリアの4種類がありますが、近年マレーシア・ボルネオ島でサルマラリアの人感染例が報告され、第5のマラリアとも言われています。感染者は、娘虫体の放出の際に起こる赤血球の崩壊によって高熱を発し、赤血球に侵入し終わると解熱するので、それぞれのマラリアの増殖周期が発熱周期の違いとなって現れます。三日熱・四日熱はこの増殖周期の違いによって名付けられています。
検査室での原虫の検出は、血液の塗抹標本を作製して染色し、顕微鏡で赤血球内の各成熟段階の原虫と特徴的な斑点、あるいは赤血球外の生殖母体を探すほか、原虫の抗原を検出する抗原検出法が併用して行われます。
たくさんの原虫に感染している場合はすぐに見つけることが出来ますが、数が少ない場合や血中に出現しない成熟段階の場合、あるいは感染を否定するために検査を行う場合には、ひたすら数人で何枚もの標本から原虫を探し続けることになり、根気がいる作業となります。原虫が検出された場合には、その特徴的な形態からマラリアの種類が同定できることもありますが、原則的に同定は遺伝子検査によって行われます。熱帯熱マラリアは、迅速かつ適切な対処をしないと短期間で重症化、さらには死に至る危険性があります。三日熱・卵形マラリアは、肝細胞内で長期間潜伏する休眠原虫が形成される為、根治療法も必要となります。いずれにせよ、流行地訪問後の発熱は、風邪だと放置せずマラリアを疑ってみる必要もありそうです。また、ハマダラ蚊は夜に吸血する習性を持ちますので、寝ている間に蚊に刺されない様に、防虫スプレーや蚊取り線香などを携行しましょう。

血液検査室 加藤多紀子