検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部

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更年期?いえ甲状腺機能障害のお話

最近、からだがほてったり、のぼせたりする。気づけば額から汗が滴る。動悸がするようになる、これはもしや?と思われた方も少なくないはず。女性の閉経後、女性ホルモンの低下によって引き起こされる更年期障害がこのような症状の代表選手のように言われたりもしますが、更年期障害の影に隠れて、甲状腺疾患もこの更年期の女性に多くみられることを御存じですか?
この甲状腺とは、喉仏の少し下にある蝶のような形をした臓器で、ホルモンを分泌し身体のあらゆるところに作用します。このホルモンを甲状腺ホルモンと言います。甲状腺ホルモンは、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)により分泌が促進されます。甲状腺ホルモンには、トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)という二種類があり、これらは昆布などの海藻類に含まれるヨードを材料にして甲状腺で作られます。
この甲状腺ホルモンは、血液中に分泌されることにより、脳、心臓、筋肉、その他全身の臓器の新陳代謝を保っています。このため、甲状腺の機能が異常をきたし、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、動悸がしたり過度に発汗したり、食事や休養を取っているのに疲れやすいなどの症状が出たりします。また、逆に機能が低下して甲状腺ホルモンの分泌が減少すると、脈拍が遅くなったり、低血圧になったり、寒がりになり、汗をかかなくなる、食欲の低下などの症状が出て、いわゆる元気の無くなった状態に陥ったりします。精神的にも落ち込みがちになり、うつ病だと勘違いしてしまうこともあります。
これらの症状に気付いても病院を訪れず、更年期障害だからと何年も放置してしまう、または適切な診察を受けず、症状ばかりが悪化してしまうことも少なくはないと思われます。
病院での甲状腺機能検査は、採血により簡単に行えます。血液中のTSH、遊離型のT4(Free T4:生物活性を持つ)をまず測定して、異常がみられるかどうか検査をします。Free T4が増加しTSHが低下している場合には『機能亢進症』を、Free T4が低下しTSHが増加している場合には『機能低下症』を疑うことになります。まずは、異常かどうかを確認し、異常がみられた場合は、追加の検査を実施して疾患の確定となります。
このような知識をふまえ、つらい症状に一人で悩まず、まずは病院を受診し、検査を受けてみるとよいでしょう。治療で辛い症状を改善して、より良い更年期ライフを過ごしていただきたいものです。

血清検査室 彦坂あゆみ