検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部

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あなたはホントに健康? 健康診断“新基準値”について

健康第一!

私の父がよく口にする言葉があります。それは『健康第一!』です。なにをするにも健康であることは大切なことです。近年、様々な健康食品が発売され、人間ドックなど医療系のテレビ番組が増えてきたのも健康への注目が高まっているからではないかと思います。では、自分が健康かどうかを知るためにみなさんはどのようなことをしていますか。自分の身体のことは自分がよく知っているという方もいるかもしれませんが、自分の健康状態を知る身近な方法のひとつとして健康診断があるのではないでしょうか。
健康診断を受けると、自分の検査値が基準値と比べて高いのか低いのか気になるところだと思います。年に一回の健康診断でその結果に一喜一憂する方も少なくないと思います。今回はそんな一喜一憂の原因にもなる“基準範囲”が新しく提案されたという“新基準案”について話をしようと思います。

健康診断とは

健康診断とは、検査を通して健康状態を評価することができ、日々の健康維持や疾患の予防・早期発見に役立てるという目的があります。特に全身的に詳細な検査を行い多種の疾患の早期発見を目的としたサービスを人間ドックといいます。

新基準案について

今までの基準範囲は高血圧や動脈硬化などの専門医師の長年にわたる治療や研究を積み重ねてまとめられた「ガイドライン」の数値を参考に人間ドック学会が示したものでしたが、各健診機関でバラバラの基準が作られていました。そこで、2014年4月より日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が共同研究事業を立ち上げ、血圧やコレステロールなど27項目の基準値を見直した新基準案を公表しました。
今回提案された新基準案の特徴は基準値を設定するためのデータの選び方にあります。平成23年に全国の人間ドック200施設で検査を受けた約150万人のデータをもとに、その中から持病がなく薬を飲んでいない、喫煙していない、1日の飲酒量が日本酒で1合未満などの条件を満たしている約34万人を「健康人」として選出しました。これによりいわゆる「異常なし」とする健康な人の数値が求められると考えられました。さらに基準を厳しくするために、健康人から得られた数値が特に高い人や低い人を除いて絞り込んだ約1万人の検査データから“新基準案”を作りました。人間ドック学会は「健康人」を超える「超健康人」のデータをもとに新基準としたとしています。
ここで注意しておかなければならないことがあります。従来の基準値は専門の医師が長年の治療や研究の積み重ねによって将来的に病気になる可能性を踏まえて設定され治療を開始する目安とされているのに対し、新基準は平成23年現在に健康とされた人の検査値であって、将来にわたって健康かどうかを保証するものではないということです。このような点について人間ドック学会では今後、学会および健康保険組合連合会にて充分に議論し、今回の超健康人のデータを5~10年にわたり追跡調査を行って新基準範囲の妥当性を検討する必要があるとしています。

おわりに

日々、検査値を相手に仕事をしている私たちにとって基準範囲は非常に大事な判断材料になっています。しかし基準範囲だけで正常か異常かを判断しているのではなく、検査値も人の顔と同様に十人十色でその人特有の基準が存在し、前回値などを参考に判断しています。自分の基準がどのくらいの値なのかを知るためにも、みなさんには定期的な健康診断の受診をおすすめします。ぜひこのコラムを読んだことをきっかけに健康診断の結果をもう一度見てみてください。もし気になることがあれば近医を受診し相談してみるのはいかがでしょうか。

臨床化学検査室 加藤大樹