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デング熱について

アフリカではエボラ出血熱が流行し、医療関係者を含む多数の死亡者が確認され世界を震撼とさせています。そんな中、日本でも驚くべきニュースが報道されました。なんと、海外旅行歴のない学生3名が『デング熱』に感染したというのです!!今まで海外旅行で感染して帰国後に発症する例は確認されていましたが、国内での感染例は過去60年以上ありませんでした。その後も続々と患者数は増え、さらには捕獲した蚊の体内からもウイルスが確認されるなど感染の拡大が明らかになってきました。
最近ではすっかり耳なじみになったこのデング熱ですが、当初はデングって何…?天狗じゃないの?と思われた方も多かったのではないでしょうか。デング熱の名前の由来には諸説あるようですが、一番有力と言われている説をご紹介します。スペイン語では男性らしさを表す「ダンディ」を「デングエロ」と言い、このデングエロが語源となっているようです。デング熱に罹ると背中の激痛をかばうあまり背筋をピーンと伸ばして歩いてしまい、その姿がダンディに見えたからだそうです。
さて、今年急激に患者数を伸ばしたこのデング熱ですが、本当に今まで日本で感染した人はいなかったのでしょうか?観光庁の調べによれば、年間に2500万人前後が日本と海外を往来しています。このような状況から考えれば、以前からも日本でデング熱が発症していたことは十分に推察されます。一部報道によると、専門家らの間では「昨年日本からドイツに帰国した女性が帰国後にデング熱を発症しており、日本での感染が示唆されていた」ということです。今となっては、これだけ海外旅行者数が多い中、デング熱を輸入感染症(海外で罹患し国内へ持ち込まれる感染症)だと思い込んでいたことの方が不思議にさえ感じます。今年に入りようやく真の状況が見えてきたと言えるのかもしれません。
デング熱の診断のための検査は、血液等のサンプルからのウイルスの分離・同定およびRT-PCRによるウイルス遺伝子の検出、ELISA法による病原体蛋白NS1の検出、血清診断では、捕捉ELISA法によるIgM抗体の検出などがあります。急性期および回復期における特異中和抗体価やHI抗体価が上昇することによっても診断が可能です。
治療薬は特になく、輸液や解熱鎮痛剤の投与などの対処療法になります。また、有効なワクチンはありません。ただしデング熱の予後は比較的良好とされています。多くの患者さんは症状がいったん回復に向かえば後遺症なく完治していきます。
感染症法における取り扱いでは4類感染症に分類され、動物,飲食物などの物件を介してヒトに感染し健康に影響を与えるおそれがある感染症とされています。媒介動物の輸入規制,消毒などの措置が必要です。診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければいけません。
デング熱を媒介する蚊は冬を越すことができません。また産み付けた卵を介して子の世代へウィルスが伝達されることはありません。ですから冬に向けて国内患者数は一時的に収束に向かうと考えられます。ただし海外との行き来がある限り、来年の夏も国内感染者は出てくるでしょう。感染を避けるためには一人一人が蚊に刺されないための対策をしなければいけません。山登りや近所の公園などへお出かけの際は、長袖服や長ズボンの着用をおすすめ致します。また蚊よけスプレーをお持ちになると、より一層の効果が期待できるでしょう。  

微生物検査室 今井 和花