検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部

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幸せホルモン「セロトニン」

セロトニンは現在、カルチノイド症候群などの診断のため、検査項目として用いられています。カルチノイド症候群は悪性のカルチノイドがセロトニンを分泌し、それにより動悸や腹痛、嘔吐などの症状が起こる病気です。セロトニンの基準値は0.04~0.35μg/mL(血漿)ですが、カルチノイド症候群ではセロトニンは高値を示します。一方うつ病などではセロトニンが低値になると言われています。セロトニンは、ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある伝達物質です。そのためセロトニンを増やすことで精神的な安定が得られると言われ、最近では「幸福物質」や「幸せホルモン」と呼ばれテレビなどでも取り上げられるようになりました。
自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があります。交感神経は主に活動している時に働く神経で、副交感神経は寝ている時に働きリラックス効果をもたらします。セロトニンはこの2種類の神経を調節する働きを活性化させることにより心のバランスを整えます。セロトニンは自然界の動植物に一般的に含まれる物質で、人体中には約10mgが存在しています。このうち90%は小腸の粘膜に、8%は血小板に、残りの2%が脳内の神経に存在しており、僅か2%のセロトニンが精神面に大きな影響を与えていると考えられます。セロトニンには、脳の大脳皮質という部分に働き、起きている時にスッキリした意識にさせる・朝起きる時、体を活動する状態にさせる・痛みの感覚を抑制させる・抗重力筋に働きかける、など様々な働きがあります。セロトニンが少なくなるとこれらの働きがうまくいかなくなり、寝起きが悪くなったり、些細なことで痛みを感じやすくなります。また、抗重力筋は重力に対して姿勢を保つために働くまぶたや首や背中などの筋肉のことであり、セロトニンが不足すると背中が丸まったり、どんよりとした表情になってしまいます。
では、どうしたらセロトニンは増えるのでしょうか?
セロトニンは規則正しい生活をしたり、光を浴びたり、ダンスやジョギングなどのリズム運動をすることにより増加すると言われています。また最近では、涙を流すことでセロトニンが増えると言われています。涙を流すと交感神経から副交感神経に切り替わり、その際にセロトニンを分泌する神経が活性化され、セロトニンが増加します。また、涙にはマンガンが多量に含まれています。このマンガンが一定量を超えて溜まるとうつ病のリスクが上がるとも言われています。涙と一緒にマンガンを出すことでうつ病のリスクを軽減できるということです。
セロトニンは血液での測定が可能ですが、保険適用となっていない事もあって、あまり普及していないのが現状です。測定は、病院にもよりますが研究目的で可能です。
最近は過度なコンピューターの使用、テレビやゲームなどによる夜更しや運動不足などセロトニンが低下しやすい生活、環境になってきています。少しでも日光を浴びる、軽い運動をする、映画を見て感動の涙を流す、などをして心の健康も気遣ってみてください。

免疫検査室 田中 詩帆