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ドーパミンとパーキンソン病

ドーパミンは、快感や多幸感を得る、意欲を作ったり感じたりする、運動調節に関連する、といった機能を担う脳内ホルモンの一つです。わたしたちの食べ物の中に含まれるフェニルアラニンやチロシンというアミノ酸が様々な酵素の働きによりドーパミンとなることがわかっています。
昔は単なるエピネフリンなどの前駆物質とされていたドーパミンですが、研究が進むにつれ、実はドーパミンは脳で神経伝達物質として独自の働きをしていて運動の制御に深く関わるのではないかと考えられました。ドーパミンを産生する神経細胞(ドーパミンニューロン)は脳の中でいくつかのグループを作っています。その中でも黒質緻密部という部位のドーパミンニューロンが変性脱落していき、分泌されるドーパミンが少なくなると無動、固縮、振戦といったパーキンソン病特有の運動症状を生じます。ドーパミンニューロンは大脳基底核とそれに指示を与える大脳皮質に枝を伸ばしてドーパミンを分泌します。それらの部位は次第に行動を習慣化したり、行動の組み合わせや順番を企画したり、戦略を練ったりする働きをしています。そのためパーキンソン病でドーパミンが少なくなると、歩こうと思ってもどういう順番に筋肉を動かしたらいいかわからなくなってしまい、体がすくんだり震えたりします。また、物覚えが悪くなったり、集中力、注意力も失われます。
加齢とパーキンソン病は深い関係があり、年をとると誰でもパーキンソン病になる可能性があります。多くの研究から、10歳年をとるごとに平均10%程度のドーパミンニューロンが変性脱落していくことがわかっています。正常の20%程度のドーパミンニューロンが減ってしまうと症状が出ると言われています。20歳の時を100%として単純計算すると、100歳でわたしたちのほとんどがパーキンソン病になるということになります。
パーキンソン病の検査には、MRI、MIBG心筋シンチグラフィー、FET-PET、血液検査、尿検査などがあります。血液検査や尿検査では、ドーパミンが代謝されて最終的に出来るHVA(ホモバニリン酸)を測定します。パーキンソン病の場合はこのHVAが通常よりも低値となります。(通常は尿:2.1~6.3mg/day 血液:4.4~15.1ng/ml) このような検体検査は簡易で一般的ですが、ほかの疾患(アルツハイマーなど)でも低値になることや多少の神経の変性脱落では値に変化がないことがあるため、より感度の高い画像診断も行う必要があります。しかし画像診断も施設が限られていたり、種類によっては保険適用ではなかったりします。また血液検査や尿検査では似たような症状の病気との区別や早期発見に繋がる可能性があるため、これらの基礎検査を行うことも必要だと思われます。
ドーパミンを増やすには、新しい刺激、初めての感動といったものが大変有効です。例えばいつもとは違う道を通ってみたり、新しいスポーツに挑戦したり、はじめての場所に訪ねてみたりすることでドーパミンが分泌されます。また、外に出るだけでも違いが出てくるので、自分の身体や気分に合わせて脳に刺激を与えてみてはいかがでしょうか。

血液検査室 田中詩帆