検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部
 
コラム ~検査にまつわるお話です~
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If the gut works,use it!(使えるなら腸を使え!)

全世界の静脈経腸栄養学会・数々の栄養サポートチームの「腸」にこだわったスローガンとも言える言葉です。日本語にすれば「使えるなら腸を使え!」となります。
栄養サポートチームは、NST(Nutrition Support Team)と略称され、さまざまな職種の専門スタッフが連携し、患者さんと担当医を側面から支えるサポートチームです。様々な病態に対し、より専門的な知識を持ち寄り、患者さんの為のより良い栄養療法について検討し、臨床検査技師もチームの一員として参加しています。
今回のタイトル、「使えるなら腸を使え!」ですが、何故敢えて「腸」なのでしょうか?小腸に焦点を合わせて書いてみようかと思います。
小腸は6~7mの長い臓器で、十二指腸・空腸・回腸から成っています。小腸を輪切りにして拡大すると絨毛突起が観察されます。絨毛突起の中央部にはリンパ管が走っていて、その表面には多数の微絨毛が並んでおり、表面積を広げることによって栄養素を効率よく吸収し、門脈を経て肝臓に運びます。
小腸は長いからと言って、どこでも同じ様な働きをする訳ではなく役割分担があります。例えば十二指腸はマグネシウム、鉄、カルシウムなど、空腸はアミノ酸、脂溶性・水溶性ビタミン、単糖類・二糖類など、回腸は胆汁酸、ビタミンB12など、吸収部位がそれぞれ決まっています。これらの物質の血中濃度は臨床検査として測定され診療に利用されます。
小腸内は、ほぼ無菌環境になっています。それに続く大腸内に存在する何千億という腸内細菌に侵される事が無いのは、そこにしっかりとした絨毛突起とそれを覆う腸粘液の存在があるからです。これが粘膜防御です。健常人であっても、やたらに絶食をしたり、柔らかい物で食事を続けたりしていると絨毛突起が小さくなり、それを覆う腸粘液も減少します。すると、腸内では「バクテリアルトランスロケーション」という現象が生じてきます。これは小腸粘膜が萎縮をきたし、細菌や菌体毒素が腸内壁を通過して、血中や腸間膜リンパ節に移行してしまう現象です。腸間膜の萎縮がリンパ球数を著明に減少させ、小腸を守るバリアが無くなってしまうのです。
小腸粘膜には、消化管リンパ装置という感染防御バリアが存在し、人の免疫能の60~70%を担っているといわれます。リンパ管装置とは、リンパ球・好中球・マクロファージから成り、分泌型IgAも関与して腸内細菌の上皮内侵入を防いでいます。口から食べ物と共に入った細菌やウイルスから身体を守るために必然的に腸の免疫が高まったと言うことです。腸は体内にありながら、相対的には体外環境であり、外界からの病原体の侵入を食い止める最大の免疫器官なのです。
可能な限り腸を使いましょう。腸は身体を守ってくれます。

臨床化学検査室 山下千知