検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部
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『On the rice!』~白いご飯の上に乗せて食べたいおかず
『白いご飯の上に乗せて食べたいおかず』と言えば何を思い浮かべますか?2011年に行ったアンケート(パルシステム生活協同組合連合会調べ)によると、1位は生卵、2位は明太子、3位は海苔という結果でした。堂々1位に輝いた生卵は卵かけご飯で食べることが多く、最近では専用醤油まで発売されていて卵かけご飯のグルメ化が進んでいます。生卵を食す文化は日本特有と言っても過言ではありません。外国人が初めて卵かけご飯を見ると驚くようです。また、スキヤキは外国人の好きな日本食のひとつですが、割り下に生卵を入れない人が多いようです。日本人がこよなく愛する生卵にも注意しなければならない点があります。それはサルモネラという細菌による食中毒です。
サルモネラ食中毒は年間を通して発生しますが、温度や湿度が高くなる6月から10月に多くみられます。平成25年厚生労働省食中毒統計調査によると、細菌性食中毒の中でキャンピロバクター、腸管出血性大腸菌以外の大腸菌に次いで3番目(患者数861人)に多く発生しています。
サルモネラの語源はアメリカの病理学者であるダニエル エルマー サルモン(Daniel Elmer Salmon)氏にちなんで名づけられました。現在、サルモネラは2500種以上の型に分類されていて、特にサルモネラ エンテリティディスという型の菌は鶏卵が原因となる食中毒を引き起こし、日本においてはサルモネラ食中毒の60~70%を占めています。
もともとこの菌は自然界に広く生息していて、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類などの腸管に存在しますが、中でも鶏の保菌率が高いことが知られています。ヒトへは動物の糞便に汚染された肉や卵を食べることにより感染したり、あるいは、これらを調理した器具や手指を介しても感染が成立します。鶏卵へのサルモネラ汚染には主に2つの経路があり、①卵殻に糞便が付着する場合、②親鶏の卵巣に保菌されていたサルモネラが卵黄に付着したまま排卵されて、産卵時点で既に卵内に存在する場合です。①では糞便を水でしっかり洗えば除去できます。②は洗っても除去できませんが、卵内に侵入した菌数は多くて数十程度と言われています。サルモネラ食中毒は毒素によるものではなく、大量に増殖した菌(おおよそ100万以上)を摂取したときに症状が現れます。100万以上の菌が経口摂取される状態とは、鶏卵内外に存在していたサルモネラが保存などの状況が悪かったために急激に増殖した場合です。
サルモネラ食中毒は腹痛、下痢、発熱、おう吐を主とした急性胃腸炎の症状が現れます。菌が体内に入ってから症状がでるまでの時間は平均12時間と言われていますが、3~4日と遅い場合もあります。また、高齢者や乳幼児、免疫力が低下した人は敗血症など重症化することがあるので注意が必要です。
サルモネラ食中毒を疑う場合は培養検査を行います。患者さんの糞便などを培地(細菌の寝床)に塗り、ヒトの体温と同じ温度のふらん器で菌を増やして、その中から食中毒の原因となっている菌を見つけ出すのです。この検査は結果が出るまでに3~7日程度の時間が必要となります。「もしかして食中毒かな?」と思って病院に行く場合は、医師に数日内に食べたもの(心当たりのある食べ物)を伝えることと、検査に提出する糞便を十分量採取することが重要です。
それでは、サルモネラに限らず食中毒にならないように予防するにはどうしたらよいのでしょうか。食中毒予防の3原則は『つけない』、『増やさない』、『やっつける』です。まず、『つけない』のひとつは手洗いです。私たちの手にはいろいろな雑菌が付着しているので、食中毒の原因菌を食べ物に付けないように調理を始める前や生ものを取り扱う前後は必ず手を洗うことが大切です。『つけない』のもうひとつは生肉や魚などを切ったまな板や包丁などの調理器具から加熱しないで食べる野菜などへ菌が付着しないように、その都度にきれいに洗うことです。また、生肉や魚に使う箸と加熱した後に使う箸を使い分けるのも予防効果があります。『増やさない』は冷蔵庫で保存することです。しかし、低温で増殖する菌もいるので冷蔵庫を過信せずに早めに食べてしまうことも大切です。『やっつける』は加熱をすることです。サルモネラを含む多くの細菌やウイルスは熱に弱いので、食材の加熱調理や調理器具の熱湯消毒が有効なのです。
そして、サルモネラ食中毒の具体的な予防方法は・・・
その1 新鮮な卵を買う。
その2 必ず冷蔵庫保存して短期間で消費。
その3 卵の割り置きはしない。
その4 加熱する場合は中心部まで熱が通るようにする。
その5 手と卵を取り扱った調理器具はその都度洗う。
その6 高齢者や乳幼児、免疫力が低下した人には加熱が不十分な卵料理は食べさせない。
などが挙げられます。食中毒にならないよう、予防法をしっかり身に着けましょう!
その1 新鮮な卵を買う。
その2 必ず冷蔵庫保存して短期間で消費。
その3 卵の割り置きはしない。
その4 加熱する場合は中心部まで熱が通るようにする。
その5 手と卵を取り扱った調理器具はその都度洗う。
その6 高齢者や乳幼児、免疫力が低下した人には加熱が不十分な卵料理は食べさせない。
などが挙げられます。食中毒にならないよう、予防法をしっかり身に着けましょう!
微生物検査室 村上日奈子