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巨赤芽球性貧血

巨赤芽球性貧血は、ビタミンB12あるいは葉酸の不足を原因とする貧血の総称であり、血液が造られている場所である骨髄を顕微鏡で観察すると、その名の通り、大きく未熟な赤血球((巨赤芽球)が認められます。
ビタミンB12は動物性食品に多く含まれます。摂取されたビタミンB12は胃壁の細胞から分泌される内因子と結合した後、回腸から吸収され主に肝臓で貯蔵されます。従って、胃癌などで胃の全てを摘出された患者さん、胃壁の細胞を攻撃する自己抗体を持っている方では内因子が分泌されず、ビタミンB12吸収障害が発生します。この自己抗体の存在によるビタミンB12欠乏を原因とする巨赤芽球性貧血を特に悪性貧血と呼び、日本人では巨赤芽球性貧血の61%を占めています。一方、胃全摘は、巨赤芽球性貧血の発症原因の34%を、その他のビタミンB12欠乏が2%を占めています。ところで、ビタミンB12の吸収不全が始まっても、すぐに息切れ、動悸、立ちくらみといった貧血の症状が出てくるわけではありません。ビタミンB12の1日の必要量は2.5μgですが、人体内には5~10㎎が貯蔵されており、さらに腸肝循環により再利用されるものもあるからです。しかし、吸収されていないのですから徐々に貯金を使い続け、約5年後位には使い果たして貧血の症状が出て来る事となります。
一方、葉酸は動物性食品とともに植物性食品にも含まれており、特に新鮮な野菜や果物には豊富に存在しています。葉酸は、妊娠・炎症・悪性腫瘍などの病態で3~5倍にその需要が増大します。また、アルコールの飲みすぎやメトトレキサートのような薬剤により、その吸収が障害されてしまいます。葉酸の貯蔵量も5~10㎎ありますが、1日の必要量が50~200μgと多いので、このような病態が持続するとビタミンB12よりも早期に葉酸欠乏による貧血の症状が現れます。巨赤芽球性貧血の約2%は、この葉酸の欠乏を原因としています。
ではなぜ、ビタミンB12あるいは葉酸の欠乏が貧血を引き起こすのでしょうか?それは、ビタミンB12と葉酸がDNA合成に必須であり、これらの不足がDNA合成を不可能にするからです。赤血球は骨髄の中で分裂を繰り返し成熟した後に脱核して末梢血液中に登場してきます。つまり子供の赤血球が大人になる途中でもう1人の自分を造るのです。分裂する為にDNAの量は2倍になり2つに分かれて双子の赤血球の子供が生まれます。しかし2倍まで増やす事が出来ないと、大きくなっても2つになれず大きな赤血球のままとなってしまいます。つまりDNAの合成が出来ないと、赤血球は大人になる事も、もう1人の自分を造る事もできず、従って末梢血液中に登場できません。骨髄の中で赤血球は一所懸命に造られていますが、末梢血液には赤血球は少なく、貧血なのです。
巨赤芽球性貧血の原因であるビタミンB12欠乏は、特殊な食事をしている場合を除いて、ほとんどが吸収の問題で起こるため、その治療法であるビタミンB12の補給は、注射または点滴でおこなわれます。葉酸欠乏の場合は、経口投与による補充療法がおこなわれます。不足を防ぐためには、普段の食事で葉酸を多く含むホウレン草などの葉物野菜や果物、レバーなどを食べるようにします。

血液検査室 加藤多紀子