検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部

【お問い合わせ先】

東邦大学医療センター
大森病院 臨床検査部

〒143-8541
東京都大田区大森西6-11-1
TEL:03-3762-4151(代表)

ノロウイルス変異で大流行!?

先日も、愛知県で園児600人超がノロウイルスによる食中毒に感染したニュースが流れるなど、今冬も流行しそうですが、最近このウイルスに変化が生じているようです。
ノロウイルスにはGⅠ~Ⅴの5つの遺伝子群があり、ヒトに感染するのは主にGⅠとGⅡで、GⅠは9種類、GⅡは22種類の遺伝子型に分類されます。ノロウイルスによる感染は2006年に都内のホテルで集団感染が発生した頃からGⅡ.4型が主流でしたが、2015年2月からはGⅡ.4が減り、GⅡ.17型が増加していることが分かりました。今まで主流だったGⅡ.4もそうですが、ノロウイルスは遺伝子型の変異(変化)が多く、2013/14年冬季シーズンから川崎で検出されたGⅡ.17は既存のGⅡ.17と遺伝子配列が異なり、新規遺伝子型番号GⅡ.P17が付与され、GⅡ.17 Kawasaki 2014と命名されました。
私たちの体はウイルスに罹ると、そのウイルスに対する免疫を獲得しますが、次々に変化するウイルスに対して免疫力を獲得するには時間がかかり、防御する力が弱いため感染しやすく、一旦感染者が発生すると周りの人にも罹りやすいのです。今年増加している新規遺伝子型のGⅡ.P17が主流となった場合には大流行が懸念されています。
病院の検査では、イムノクロマト法による抗原検査が一般的に行われています。この検査法では、今まで多く発生していた遺伝子型GⅡ.4に比べてGⅡ.P17は十分なウイルス量があっても検出できない場合もあり、その使用には注意が必要であるとの国立感染症研究所報告を受けて、各検査試薬メーカーは反応性を改良した製品を昨年12月初旬から発売しています。しかし、検出感度の問題などから、抗原検査が陰性でもノロウイルス感染症を否定できないため、症状などにも注意して、おう吐物や便の処理などに感染拡大対策を行う必要があります。

では、予防方法に変化はあるのでしょうか?

ウイルスの予防として有効なワクチンですが、ノロウイルスワクチンは2015年12月現在、開発中で市場には出ていません。ノロウイルスは培養細胞や実験動物への感染が成功していないウイルスのため、ワクチンの作成にも時間がかかっているものと思われます。

予防方法は今までと変わりませんが、ノロウイルスは細胞に感染しないと増殖できないので、体内に入れないことが一番です。

  • 二枚貝などを食べるときは十分に加熱する。
  • おう吐物の処理の際にはアルコールは無効であるため、次亜塩素酸ナトリウムを使用し、できればエプロン、マスク、ビニール手袋を用いて行う。
  • などが重要です。
    また、普段からマスクの着用、手洗い、うがいをしっかり行うことがノロウイルスの感染から身を守る一番の対策です。

参考文献:NIID 国立感染症研究所ホームページ

微生物検査室 福澤 滋