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伊勢志摩サミットと薬剤耐性菌

今年の5月に先進国首脳会議が伊勢志摩で開催される予定となっており、ニュースなどのメディアでも連日取り上げられ注目されています。さて、伊勢志摩といえば伊勢神宮、そして祀られている天照大御神ですね。その昔、崇神5年に大和国で半数の住民が死に絶えたと伝えられる疫病が大流行しました。崇神天皇はこの疫病を神のたたりとして恐れ、宮中に祀っていた天照大御神と倭大国魂神を皇居の外に移したと記されています。もちろん、疫病は神のたたりではなく細菌やウイルスなどの微生物が原因となる感染症ですが、微生物の存在は知られていない時代ですので対策は神頼みだったのでしょう。現代では、多くの感染症の原因が解明され、その治療薬も多数開発されてきました。
ウイルスには抗ウイルス薬、細菌には抗生物質(抗菌薬)、真菌(カビ)には抗真菌薬、そして寄生虫に効果のあるイベルメクチンを発見・開発した大村智・北里大学特別栄誉教授のノーベル賞も記憶に新しいですね。ウイルスや細菌など一括りにしましたが、その中でも多くの種類があり、目的の病原体にあわせて治療薬も使い分けられます。最初に発見された抗生物質であるペニシリンはブドウ球菌に対して劇的な効果があることがわかり治療に利用されてきました。その後も、他の多くの細菌に対しても効果的な抗生物質が続々と発見・開発され、感染症は容易に治療できるものと思われました。しかしながら、大きな壁にぶつかる事となりました。抗生物質が効かない薬剤耐性菌の出現です。薬剤耐性菌が出現し拡がる理由の一つに抗生物質の乱用が挙げられています。抗生物質を使うと篩(ふるい)にかけるように薬剤耐性菌だけが残る恐れがあり、乱用が繰り返されるうちに薬剤耐性菌だらけになってしまうというものです。
新たな薬剤耐性菌が次々と見つかり、世界各地に拡がっていく現状に危機感を感じた米国は2016年3月に抗生物質が効かない薬剤耐性菌に対抗するための国家行動計画を発表しました。次いで日本でも先日4月5日に薬剤耐性対策アクションプランを決定しました。内容をまとめると「医療機関における適正使用を推進して、抗生物質の使用量を削減する」というものです。当院の臨床検査部では感染症の原因微生物と効果のある抗生物質を調べる検査を行い、適正使用の推進に役立てて頂いています。
さて、話は伊勢志摩サミットに戻ります。サミットの会議でも薬剤耐性菌対策は重要な問題として取り上げられる予定となっています。世界各国で、他国との人や食品などの出入りがある以上、薬剤耐性菌問題は1国だけの対策ではなく世界各国が足並みを揃える必要があります。薬剤耐性菌対策は神頼みにはできないのです。

微生物検査室 佐々木雅一