検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部
 
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奇跡のランナー

2016年8月、ブラジルのリオデジャネイロでオリンピックが開催されます。1896年に始まった近代オリンピックですが、その前身はギリシャを中心とした宗教行事でした。ゼウスをはじめ多くの神々を崇めるための競技祭だったのです。
オリンピック競技の1つであるマラソンですが、その起源は紀元前450年頃の「マラトンの戦い」に始まります。ギリシャ軍の勝利を伝えるために、一人の兵士が約40キロを一気に走り抜けました。その歴史を懐かしみ、第一回アテネオリンピックから競技に加えられました。
1960年ローマオリンピックのマラソンで無名のアフリカ黒人選手が金メダルを獲得しました。それは、エチオピア出身のアベベ・ビキラです。靴が壊れたため、彼は裸足で走り、当時の世界最高記録を樹立したことで、当時の人々に強烈な印象を与えました。1964年の東京オリンピックでも金メダルを獲得し、初の2連覇を達成し、それ以後アベベの記録を破ったランナーはいません。まさに「奇跡のランナー」といえます。
私たちは日常業務で顕微鏡を使用してミクロの世界を覗くことが多いのですが、そこにも必死に頑張るランナーがいます。私達の生命を生み出すために大事な役割をしてくれる精子がその1つです。精子は通常1度に女性の体内に1~4億個放出されますが、その過酷な環境から99%が死滅します。残りの1%が走り続け、卵管に辿り着けるのは4万分の1の確立と言われています。卵管に着いてから2日間位しか生きていられないので、本当に生命の奇跡を感じます。
精液検査は不妊外来受診の患者さまが対象となり、臨床検査部では一般検査室が担当しています。2010年のWHOによる精子基準は液量が2.0ml以上、精子濃度は20×10⁶/ml以上、運動率40%以上、前進運動率32%以上、正常形態15%以上とされています。基本的に測定は、精子特性分析器を使用しますが、濃度が少ない時、運動率が低い時は顕微鏡で目視算定を行います。無精子症の疑いがある時は2000rpm.で10分間遠心し、その沈渣の標本を3枚作製し、すべてを観察し、精子の有無を確認しています。これは極めて重要なことで、1つでも精子が存在すれば、ランナー達が増える可能性があり、何れ「奇跡のランナー」が誕生するかもしれません。
最近では病院が苦手という人のために、自宅で出来る精液検査キットがインターネットで売られています。リラックスして検査出来るのは、とても良いかもしれません。
2020年にはまた東京でオリンピックが開催されます。その成功と様々なドラマや奇跡を期待しましょう。

一般検査室 加藤弘子