検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部

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尿の色

私は臨床検査技師という仕事上、多くの尿検体を目にしますが、検体ごとに様々な色があることに気づきました。自分自身のことを思い返してみても、朝の尿は黄色く、時間が経つにつれて無色に近づくような気がします。1日を通して見ても色が変化する尿、その色は何によって決まるのでしょうか。
通常、尿の色はウロクロムと呼ばれる物質の色によって黄色になります。ウロクロムは、赤血球が分解されて出来たビリルビンが腎臓で代謝されることで生成されます。このウロクロムの1日の生成量はほぼ一定で、夏場など水分を多く摂った場合は尿中に排泄される水分が増えるため、尿中のウロクロムが希釈されて色が薄い黄色になります。逆に、運動後など汗をかくと脱水状態となり、尿中に排泄される水分が減るためウロクロムが濃縮されて濃い黄色になります。このように、尿中のウロクロムの割合が尿の色を決めています。一方、ウロクロム以外の物質によって色が変わることがあります。その身近な例として栄養ドリンクが挙げられます。栄養ドリンクに含まれるビタミンが尿中に排出されると、ビタミンB2の色によってオレンジ色になります。
尿の色と疾患に関係はあるのでしょうか。ウロクロムの割合が関係する疾患として糖尿病と尿崩症が挙げられます。糖尿病では尿の量、回数ともに増えてのどが渇くために水分摂取量が増えます。そのため尿中に排出される水分が増え、ウロクロムが希釈されるために尿は淡黄色から無色になります。尿崩症は尿の水分量を調節するホルモン分泌が異常を来す疾患で尿量が増加します。そのため、糖尿病と同様に尿量の増加に伴って無色になります。一方、熱や下痢、嘔吐などで水分摂取不良となると尿中のウロクロムが濃縮され濃い黄色になります。ウロクロム以外で色の変化が認められるケースでは、以下の疾患が挙げられます。肝障害や胆道閉塞では、黄疸の原因であるビリルビンが腎臓から尿中に排泄されることで黄褐色、腎疾患や尿管結石による出血で赤褐色、また膀胱炎などにより膿が混入すれば乳白色になることがあります。次に、珍しい色として「紫色畜尿バッグ症候群(Purple Urine Bag Syndrome: PUBS)」があります。これは便秘などによる腸内細菌が異常増殖と尿路感染症が合併すると、感染した細菌由来の酵素によって生成された物質が畜尿バッグやチューブが紫に染めるというものです。したがって、日常生活の中で紫色の尿を見ることはないですが、入院患者において蓄尿など、尿を一時的に溜める場合に稀に見ることがあります。
必ずしも尿の色が疾患と結びつく訳ではありませんが、ぜひ体が示す異常サインを見逃さないよう“尿の色”にも注目してみてください。

臨床化学検査室 加藤大樹

[参考]