検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部
モンキーフェイス
皆さんは、モンキーフェイスと呼ばれている寄生虫を知っていますか。
この寄生虫、かわいらしい呼び名とは違い、ヒトに感染し発症するとちょっとやっかいな寄生虫なのです。
この寄生虫、かわいらしい呼び名とは違い、ヒトに感染し発症するとちょっとやっかいな寄生虫なのです。
その寄生虫とは、ジアルジアランブリア(Giardia lamblia)、別名ランブル鞭毛虫と呼ばれています。この原虫を病原体とする疾患はジアルジア症といい、感染症法では5類感染症として指定されています。STI(性感染症)としての認知が高い為、耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。
主な感染経路は、海外渡航、同性愛者間の性行為、汚染水の摂取などが知られていて、日本では年間100名弱の感染の報告があります。
世界中に広く分布していますが、発展途上国(特にアジア地域)が主な感染地域です。日本では、輸入感染症として旅行者下痢症の代表的な病原体の一つとなっています。感染してからの潜伏期は1~2週間程度(2~3週間との説もある)であり、感染者が帰国してから発症するケースも少なくありません。
しかしながら、国立感染症研究所感染情報センターによると、1999年4月から2006年3月までの期間でランブル鞭毛虫症に関して683例の報告があり、感染地域不明を除き、国内感染例が298例、国外感染例が271例と、旅行者に感染が多いとされるなかで国内感染例が半数以上を占めていることがわかりました。
主な感染経路は、海外渡航、同性愛者間の性行為、汚染水の摂取などが知られていて、日本では年間100名弱の感染の報告があります。
世界中に広く分布していますが、発展途上国(特にアジア地域)が主な感染地域です。日本では、輸入感染症として旅行者下痢症の代表的な病原体の一つとなっています。感染してからの潜伏期は1~2週間程度(2~3週間との説もある)であり、感染者が帰国してから発症するケースも少なくありません。
しかしながら、国立感染症研究所感染情報センターによると、1999年4月から2006年3月までの期間でランブル鞭毛虫症に関して683例の報告があり、感染地域不明を除き、国内感染例が298例、国外感染例が271例と、旅行者に感染が多いとされるなかで国内感染例が半数以上を占めていることがわかりました。
ジアルジア症の主な症状は、下痢、腹痛、嘔気・嘔吐、そのほかに脂肪便などがあります。今の時期は、下痢や腹痛の症状からノロウイルス感染を第一に疑いやすいため、鑑別が重要となってきます。ジアルジア症では発熱を伴うことは稀です。
また、ジアルジア症を疑う場合に行う検査は、便中からの直接顕微鏡観察での栄養体または嚢子(シスト)の検出です。ギムザ染色やコーン染色などの染色を行うこともあります。嚢子(シスト)の排出は間欠的なため、数日間にわたり3回ほど検査を実施することが推奨されています。
また、ジアルジア症を疑う場合に行う検査は、便中からの直接顕微鏡観察での栄養体または嚢子(シスト)の検出です。ギムザ染色やコーン染色などの染色を行うこともあります。嚢子(シスト)の排出は間欠的なため、数日間にわたり3回ほど検査を実施することが推奨されています。
ジアルジア症の病原体であるランブル鞭毛虫は、栄養体と嚢子(シスト)の2形態をもちます。栄養体は軸索を中心に左右対称の洋梨型で、2核を有し、この2核が原虫の「眼」のようにみえることから、monkey face(モンキーフェイス)と呼ばれています。また4対の鞭毛をもち運動能があります。そのため顕微鏡で観察した際には、ひらひらと遊泳する姿がみられます。腹面は吸盤(吸着円盤)になっていてこれを利用して小腸粘膜に吸着します。主な寄生部位は、十二指腸、上部小腸、胆道系です。
嚢子(シスト)は卵円形で2~4個の核を有し、鞭毛束や軸索の残存を見ることはありますが運動性はありません。
糞便中に出現するのは感染型の嚢子(シスト)で、熱や乾燥に弱いのですが、水中では数か月もの間生存します。シストの感染力は強く、わずか10個のシストを摂取するだけで感染が成立するという報告があります。
ジアルジア症は、感染しても症状がでず不顕性感染の人も多い疾患です。無症状者はシストキャリアとして感染力のあるシストを持続的に排出するため、感染源としてはむしろ有症者よりも重要となります。
嚢子(シスト)は卵円形で2~4個の核を有し、鞭毛束や軸索の残存を見ることはありますが運動性はありません。
糞便中に出現するのは感染型の嚢子(シスト)で、熱や乾燥に弱いのですが、水中では数か月もの間生存します。シストの感染力は強く、わずか10個のシストを摂取するだけで感染が成立するという報告があります。
ジアルジア症は、感染しても症状がでず不顕性感染の人も多い疾患です。無症状者はシストキャリアとして感染力のあるシストを持続的に排出するため、感染源としてはむしろ有症者よりも重要となります。
激しい腹痛や下痢の症状が続き、医療機関を受診する際には、医師に発展途上国への渡航(近親者が該当するケースも含め)があるかどうかも併せて伝えてください。
モンキーフェイス、かわいいけれどあなどれない寄生虫です。
一般検査室 蒲生夏美
[参考文献]
- 国立感染研究所感染情報センター
川原隆一,吉富宗宏,御鍵和弘ほか 胆嚢ポリープの術前に偶然発見されたランブル鞭虫症の1例 2013;27(2):226-231 - トリコモナス症,ジアルジア症 奈良武司 臨床と微生物 Vol.43 No.2 2016.3
- 丸山治彦,治療薬 寄生虫病・熱帯病治療薬 わが国における寄生虫病・熱帯病薬物治療の実際.日本薬理学雑誌 2008;132(5):292-296

ランブル鞭毛虫(栄養体) 無染色(×400)
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