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ストレスと月経不順

4月も終わり、新生活には慣れましたか。新しい環境に身を置くと、知らないうちにストレスがたまっていたりすることがあると思います。「ストレスは月経不順の原因となる。」女性の方は聞いたことありますよね。これは女性ホルモンと脳の関係を反映しています。
今回は、ストレスが引き起こす月経不順についてお話したいと思います。
月経は卵胞期、排卵期、黄体期、月経期の4つのステージに分けて考えることができます。卵胞期には脳の視床下部より性腺刺激ホルモン(GnRH)が放出されます。GnRHは下垂体より卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌を促します。これら性腺刺激ホルモンは卵巣に働き、FSHの働きによって卵胞が形成されます。卵胞からはエストロゲンが分泌され、卵子の成熟化や子宮内膜の肥厚化が起こります。エストロゲンの分泌がピークに達した排卵期には黄体形成ホルモンの作用によって成熟卵胞の排卵が起こります。排卵後、卵胞は黄体に変化し、黄体期に突入します。黄体期にはプロゲステロンが分泌され、子宮内膜をさらに肥厚化し、卵子が着床しやすいように準備します。着床が成立しないとプロゲステロンの分泌は減少し、子宮内膜は役目を終え、剥がれ落ち月経となります。
月経は、約1ヵ月周期をもち、妊娠、閉経するまで続きます。人によって周期日数はバラバラですが、基本的には一定の周期を保っています。日数が大幅に延びたり、数ヵ月来なかったりと、周期が安定していない状態を月経不順と呼びます。
月経不順になる原因はさまざまです。月経を迎えてすぐの思春期には卵巣の働きが不完全のため不順になりやすく、閉経前には卵胞の老化によりエストロゲンの分泌が減り周期的に月経が来なくなります。そのほかの原因の一つとしてストレスが挙げられます。
ではなぜ、ストレスを受けると月経不順になるか。通常卵巣はエストロゲン、プロゲステロンの分泌が減少すると不足分を補うため脳に信号を送り、分泌を促進するフィードバック機構を機能させて恒常性を維持しています。しかしながら、ストレスを受けた場合はフィードバック機構が破綻します。脳は過度なストレスを受けることによって、ストレスホルモンと呼ばれているCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)の分泌を促進します。CRHは食欲抑制作用、睡眠抑制作用およびGnRH分泌抑制作用を有します。つまりストレスを受けることは、GnRHの分泌が抑制され、FSHとLHは減少し、最終的にエストロゲン、プロゲステロンの産生が抑制され、月経不順に結びつきます。このように、女性ホルモンは脳と密接にかかわっているのです。
女性ホルモンのFSH、LH、E2(エストロゲンの一種)、プロゲステロン、またCRHによって分泌が促されているACTH(副腎皮質刺激ホルモン)は血液で測定が可能です。月経不順の原因を見分けるためにもこれらの項目は有効です。ストレスは考えられる原因の一つにすぎないので、卵巣機能に問題がないかどうかを確かめるためにも一度検査をしてみることをお勧めします。

臨床化学検査室 伏見友希