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再び流行!?麻疹について

2007年に10~20代の間で麻疹が流行したことは記憶に新しいかと思います。2007年4月21日から7月21日の間に厚生労働省から報告された全国各地の休校、学年閉鎖、学級閉鎖数は263校にあり、そのうち高校が73校、大学が83校ありました。その際、麻疹のワクチン接種希望者が医療機関に殺到し、麻疹ワクチン不足、さらに抗体価を測定するキットも不足するなど社会問題に発展しました。
そして今年、台湾からの旅行客が発端となって沖縄県で流行し、愛知県にも感染が拡大した麻疹についてお話ししようと思います。

麻疹とは、パラミクソウイルスによって引き起こされる感染症です。空気感染、接触感染、飛沫感染でヒトからヒトへ感染し、感染力は極めて強いとされています。麻疹に対して免疫を獲得していない人が感染するとほぼ100%発症し、一度感染すると終生免疫を獲得します。
臨床経過としては、①約10日間の潜伏期。②38~39度の発熱、咳、鼻水といった風邪症状が現れるカタル期。③カタル期を2~3日経過後、再び40度近い高熱が出て、顔面から全身へ特徴的な症状である融合性発疹が出現する発疹期。④4~5日後、色素沈着を残し発疹は消退する回復期。の4病期に分類されます。
麻疹の診断法は、ウイルス遺伝子検出法、血清診断法があり、2つ同時に行うことが一般的です。ウイルス遺伝子検出法は、ウイルス排泄量が多いカタル期に血液、咽頭ぬぐい液、尿のいずれか2点以上を採取し、麻疹ウイルスの遺伝子を検出します。血清診断法では、ウイルス排泄量が少なくなり、抗体価が上昇する発疹期に採血し検査します。麻疹ウイルスに感染していると、麻疹ウイルスに対する特異的IgM抗体価の上昇、発疹期(発疹出現~7日の間)と回復期(発疹期から2~4週間後)のペア血清でのIgG抗体価に優位な上昇が認められます。
かつては小児のうちに麻疹ウイルスに感染し、自然に免疫を獲得していた時代もありましたが、予防接種受診率が上がったことにより、自然に感染する人が少なくなり流行回数が減ったため、2006年度からは2回接種が導入されることになりました。2回接種すれば1回の接種で95%以上の人が麻疹ウイルスに対する免疫を獲得でき、2回目の接種により1回目で免疫を獲得できなかった人も含め97~99%の人が免疫を獲得できると言われています。2007年に流行した原因として、1度も予防接種を受けていない人がいたこと、予防接種を受けたが免疫が獲得できなかった可能性があること、予防接種を受けたが長年、麻疹ウイルスにさらされる機会が減り、麻疹ウイルスに対する免疫が低下してしまった可能性があると考えられています。2008年から5年間、中学1年生、高校3年生相当の年齢に2回目の麻疹ウイルスのワクチン接種を受ける機会を設けたことが奏功して、2009年以降10~20代の患者数は激減しました。
その結果、日本では2015年3月、WHO西太平洋地域事務局により土着のウイルスが国内に存在しない、排除状態にあると認定されました。しかし、近年はアジア諸国からの輸入感染により、毎年罹患者が発生しているのが現状で、今回もそれに該当します。

また、麻疹は合併症もあり、5歳未満の乳幼児と20歳を超える成人がハイリスクとされ、特に肺炎、脳炎には注意が必要です。肺炎は若年者の症例で多く、死亡症例の約60%を占めます。脳炎は1000人に1人程度発症し、成人では15%では急速に進行し死亡に至るとされ、25%では神経学的後遺症を残すとされています。

麻疹は感染力が強く、空気感染もするため手洗い、マスクのみでの予防はできません。最も有効な予防法は、麻疹ウイルスのワクチン接種です。日本のように排除状態の国もありますが、未だに発生している国もあり、治療法はありません。成人してから罹患すると重症化することが懸念されるため、感染が拡大してから対処するよりも、備えておくことが大切です。ご自身の麻疹罹患歴、予防接種歴について今一度ご確認することをお勧めいたします。

Vol.62, 2018.05

血液検査室 長岡すみか

参考文献

奥野英雄 多屋馨子 (2015). 日本内科学会雑誌104,782~787

岡庭豊 (2014)病気がみえる6 免疫・膠原病・感染症 MEDIC MEDIA

NIID 国立感染所研究所

厚生労働省