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血液中に細菌?

医療ドラマを見ていると、その中で「敗血症になる前に早く治療を..!」なんてセリフを聞いたことはありませんか?耳にしたことはあっても、敗血症とはどのような状態なのかよくわからない方もいると思います。そこで今回は敗血症と血液培養検査についてお話します。

敗血症とは本来無菌であるはずの血液中に病原細菌が侵入してしまう感染症です。血流を介して病原細菌は全身に拡がり、炎症反応を引き起こします。多くは急性の経過をたどり、治療が遅くなると死に至ることもあります。そのため早期に診断することが極めて重要になります。敗血症など体内の炎症を調べる臨床検査は主に血液中の白血球数、CRP(C反応性蛋白)、プロカルシトニン濃度などの項目が診療に利用されています。白血球数やCRP、プロカルシトニン濃度を測定することで炎症の有無や程度を知ることはできますが、感染症の原因菌や治療に使用すべき薬剤(抗菌薬)を知ることはできません。そこで実施するのが血液培養です。血液培養は採血した血液中に存在する菌を育て、検出する検査です。検出した細菌を明らかにすることは、感染症の全体像を知る手がかりになるだけでなく、治療に有効な抗菌薬を選択するための検査に進めることができます。

血液培養を実施するタイミングは

  1. 38度以上の発熱や36度以下の低体温、悪寒戦慄、意識障害といった敗血症が疑われる症状のとき
  2. 白血球の増加。特に細菌を攻撃する好中球という白血球が増える場合
  3. 逆に好中球が減少した場合
などがあります。
そして、大切なのは抗菌薬を投与する前に血液培養の採血を実施することです。抗菌薬を先に投与してしまうと、場合によっては細菌が死滅して発育が抑制されるなどの理由で原因となる病原細菌を捕まえることが困難になるからです(自己判断で抗菌薬を服用するのは危険です)。

血液培養は培養液の入ったボトルを使います。病原細菌は酸素が好きな菌(多くの病原細菌がこれです)と酸素が嫌いな菌(嫌気性菌と言います)が存在するため、培養ボトルは酸素を含むボトル(好気ボトル)と含まないボトル(嫌気ボトル)2本をセットで使います。培養ボトル1本あたり10mLの血液接種が必要で、採血部位を変えて2セット(合計4本)実施しますので40mLの血液が必要となります。非常に多くの血液を使用しますが、次のような理由があります。

  1. 採血量を増やして病原細菌検出の感度を上げる
  2. 人の皮膚には常在菌がいて採血の際などにそれらが混入することがあるため、コンタミネーションの判断をする
この2つの目的のため別の部位から多くの血液を採取して培養を行います。
人の皮膚には常在菌と呼ばれる健康な人には悪さをしない細菌が住み着いており、採血の際にそれらが血液培養ボトルに混入して増殖してしまうことがあり、これをコンタミネーションと言います。採血部位を変えることでコンタミネーションを判断することができます。違う部位から採取した2セットから同じ細菌を検出した場合にはコンタミネーションとは考えませんが、1セットのみから皮膚の常在菌を検出した場合にはコンタミネーションの可能性が高くなります。

現在、世界中で抗菌薬の効かない薬剤耐性菌が問題となっています。薬剤耐性菌対策で必要なことは抗菌薬の適正使用です。適正使用を行うためには原因となった病原細菌を調べる必要があり、肺炎であれば痰を、膀胱炎であれば尿を調べることで原因となった病原細菌を知ることができます。血液培養は感染部位を絞った検査ではありませんが、病原細菌が好んで感染を起こす臓器というのが知られていることから、血液培養から肺炎球菌を検出した場合には肺炎や髄膜炎を、大腸菌を検出した場合には腎盂腎炎などの尿路の感染症や胆管炎などお腹の感染症などを推定することができます。そして、原因となる病原細菌を捕まえることで使うべき抗菌薬を詳しく調べることができます(薬剤感受性検査)。これらのことから血液培養は重要な検査として位置付けられており、重症感染症を疑う場合や、原因不明の感染症を疑う場合には必ず調べる検査となっています。

高齢者や免疫機能が低下している場合、悪性腫瘍や糖尿病などの疾患をもっている場合敗血症になるリスクが高いと言われていますが、誰でも感染症から敗血症に罹患する可能性はあります。そのため敗血症や血液培養検査はあまり馴染みのない疾患と検査ではあると思いますが、このコラムを契機に知っていただけたらと思います。

Vol. 70, 2019. 2

微生物検査室 加藤美彩樹

参考文献

血液培養検査ガイドライン 松本哲哉 満田年宏 訳  医歯薬出版株式会社

プライマリーケアのためのワンポイントレクチャー@東京医科大学 血液培養

敗血症情報サイト 敗血症.com

臨床検査学講座 臨床微生物学 松本哲哉 編集 医歯薬出版株式会社