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RSウイルス感染症とは?

鼻水や咳、発熱といった症状、ただの風邪だから寝ていれば良くなる…なんてことはよくありますよね? 風邪の原因は「細菌」ではなく「ウイルス」が上気道に感染することによって引き起こされることがほとんどです。一般的な風邪のウイルスに対する薬はありませんし、細菌を退治する抗菌薬は通常不要です。したがって風邪を引いたときはしっかりと体を休めることが重要ですので冒頭の対応は正しい方法です 。ところが年齢によっては少し注意が必要な風邪の原因ウイルスがあります。それは最近報告数が増加しているRSウイルス感染症です。今回のコラムではRSウイルスについて紹介したいと思います。

RSウイルスは感染力が強く、年齢を問わず乳幼児から高齢者まで誰しもが感染する可能性があるウイルスで、3歳までにほぼ全ての小児が感染すると言われています。免疫が出来にくいことから、成人になってからも再感染することがありますが、発熱や咳といった風邪様の症状で済むことが多いです。RSウイルスが問題となるのは主に乳幼児や小児に感染した場合です。肺炎や細気管支炎といった重篤な症状を引き起こす可能性があり、特に乳幼児に感染した場合には乳幼児突然死症候群の原因にもなり得ると言われているため、注意が必要です。乳幼児や小児で発熱や咳など風邪様の症状のほかに苦しそうな咳や喘鳴 (ぜいぜいいとした息)の症状があったら早めに病院へ行くことをお勧めします。

インフルエンザの検査と同様にRSウイルスの迅速検査があり、診断の補助として利用されています。この検査はイムノクロマトグラフィーという原理が用いられています。 鼻の粘膜 を綿棒で拭ったものを使い検査します。検査結果がでるまで約10分程度の非常に迅速な検査ですが、検査時期や採取方法などによってウイルスの検出感度が左右されるためRSウイルス感染症の患者でも検査結果が陰性と出てしまう(偽陰性といいます)場合もあります。これはインフルエンザなどにも言えることですが、検査で陰性となったから感染していないとは言い切れませんので注意してください。また、この検査は1歳未満の外来患者さん、入院患者さん、早産児や先天性心疾患などを患う小児に限定されていて1歳以上の疾患を持たない小児や大人は保険適応外となります。

冬季に流行がみられるRSウイルスですが、2019年秋、全国で流行し過去最多の大流行になりそうな状況です。10月に入り落ち着き始めたものの、これ以上感染が拡大しないように対策が必要です。主な感染経路は、RSウイルスに罹患している患者さんのくしゃみなどに含まれるウイルスを吸い込むことで感染する「飛沫感染」とウイルスが付着した手で鼻や口などに触れることで感染する「接触感染」です。このウイルスが拡がる経路を遮断することが必要で、手洗いの励行やマスクなどの咳エチケットが予防策となります。もう一つ感染症の一般的な予防方法としてインフルエンザウイルスなどのようにワクチンが使われていますが、RSウイルスはワクチンが存在しません。ただし、予防薬として遺伝子組み換え技術を用いて作成されたモノクローナル抗体製剤であるパリビズマブがあります。しかし、全員が投与対象となるわけではなく、対象となる患者さんは早産児や慢性肺疾患・先天性心疾患を持つお子さまとなっています。(※詳しくは下記の厚生労働省ホームページ参照ください。)
乳幼児にとって、たかが風邪とはいかないRSウイルス。これから冬季にむけてRSウイルスウイルスが増加し、インフルエンザはじめ他の感染症も増えてきます。私達にできる対策、手洗い・咳エチケットをしっかり実施して感染予防をしましょう。

Vol. 78, 2019. 10

微生物検査室 加藤美彩樹

参考資料