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ウコンと肝障害について

肝臓関連のコラムは3回目になりますが、今回は飲み会の前に飲むことが浸透してきているウコンと肝疾患について話したいと思います。

まず、一般的にお酒の前によく飲まれているウコンは「秋ウコン」という種類になります。英語名では「ターメリック」と呼ばれ、香辛料の名前としても耳にしたことがあるのではないでしょうか。この秋ウコンは他の種類のウコンに比べクルクミンと呼ばれるポリフェノールの1種が豊富に含まれており、これが二日酔いなどのお酒の対策に効果があると言われています。
ウコンは本当に二日酔いに効くのかということは、まだ様々な議論がなされているようなので今回のコラムではお話ししません。このコラムでは、最近報告されているウコンと健康被害について中心にお話しさせていただきます。

ウコンは上でも少し述べたのですが肝臓機能の回復や強化を目的として広く利用されている健康食品です。しかし、2005年の「民間薬および健康食品による薬剤性肝障害の調査」では薬剤性肝障害の原因薬物としてウコンは報告件数が最も多く、全体の24.8%を占めていることが報告されています。また、同様に2013年に報告された「健康食品・サプリメントによる健康被害の現状と患者背景の特徴」についての論文では、ウコンが肝臓疾患の健康被害と関連があることが報告されており、さらにはもともと肝臓疾患の既往歴をもつひとに健康被害が起こっていることが分析されています。

ウコンが肝障害を引き起こす要因については、ウコンの効能そのものが肝臓の負担となり引き起こされるもののほかに、アレルギー性によるもの、また、ウコンに含まれている鉄分の過剰摂取により引き起こされるものが報告されています。しかし、鉄含量に関しては、必ずしもウコンが高いわけではなく、ウコン製品として鉄含量が高い健康食品が流通しているとの解釈が正しいようです。そのため、C型慢性肝炎患者など鉄過剰を起こしやすいひとは注意が必要との報告が出されています。

肝機能を評価するマーカーとしては、これまでに何回もコラムに登場してきているのですが、AST、ALT、ALPやγ-GTPなどがあり、そのなかでも薬物性肝障害の診断基準にはALTとALPが組み込まれています。
ALTは主に肝細胞に存在し、肝細胞が破壊されることにより、血液中に漏れ出します。ALPは肝臓などで作られる酵素で、肝機能が低下し、胆汁の流れが悪くなると胆汁中のALPが血液中に漏れ出し数値が上がります。これらの検査項目を用いることにより、肝細胞に障害が起きているのか、胆汁うっ滞によるものなのか病型の分類が行われています。これらの数値が高い場合には肝機能が弱まっているのではないか?と心に留めておく必要があるかもしれません。

まとめになりますが、今回登場したウコンによる健康被害の報告件数が多いと言われているのはウコンが日常生活に浸透し、摂取している人が多いのも一因ではないかと言われています。ウコンは歴史的に使用経験が長く、それ自体は決して危険なものではありません。しかし、どのような健康食品でもそうですが、多量摂取すれば身体になにかしらの不調をきたします。健康食品を日常的に摂取している人は自分がどのようなものを摂取しているのかを正しく理解する、情報を集め把握することが重要なことではないかと思います。

Vol. 79, 2019. 11

血液検査室 安井 優太郎

参考資料

日本医師会ホームページ. ウコンについて

厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』.「統合医療」情報発信サイト

小池麻由, 他: 健康食品・サプリメントによる健康被害の現状と患者背景の特徴, 医薬品情報学 14:134-143,2013

滝川 一, 他:DDW-J2004ワークショップ薬物性肝障害診断基準の提案, 肝臓 46 : 85-90, 2005.

恩地森一, 他:民間薬および健康食品による薬物性肝障害の調査, 肝臓46 : 142-148, 2005

梅垣敬三:保健機能食品の安全性・有効性と効果的な利用, 栄養学雑誌77 : 67-75 , 2019