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コロナウイルスと臨床検査

今、ニュースなどのメディアやSNSでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の話題で持ちきりです。中国だけに留まらず世界中で感染が報告されており、日本でも毎日のように新たな感染が報告されています。世界保健機構(WHO)からも制御できる可能性があるとしつつも3月11日付けでパンデミックにあたると発表されました。その中で新型コロナウイルス感染の診断検査として実施される「PCR検査」という言葉に触れる機会が増えていると思いますがPCR検査がどのような検査なのかご存知ない方も多いと思います。そこで今回のコラムではPCR検査についてお話をしたいと思います。
生物の遺伝情報はDNA(デオキシリボ核酸)またはRNA(リボ核酸)と呼ばれる核酸に刻み込まれています。この核酸に刻み込まれている遺伝子を検査する方法の1つがポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)いわゆるPCR検査です。
特定の二本鎖DNAの断片だけを選択して増やすことで判定を行うため採取したDNAが微量であっても判定が可能となります。
ウイルスはDNAかRNAどちらかの核酸のみ保有しており保有している核酸によってDNAウイルスとRNAウイルスに分類されます。コロナウイルスはRNAウイルスであるためDNAを保有していません。そのためPCR法を実施するにはRNAをDNAへと変換させる必要があります。そこでコロナウイルスの検査には逆転写反応(reverse transcription)によってRNAに相補的な二本鎖DNA(complementary DNA:cDNA)へ変換してからPCR法を実施します。この方法をRT-PCR法(Reverse Transcription – Polymerase Chain Reaction)と言います。
PCR法の主なステップは3つです。

①熱変性:加熱することで本来なら二本鎖であるDNAを変性させ一本鎖DNAとします。
②アニーリング:増幅したい領域にあわせて一本鎖DNAに目的のDNA領域の目印となるプライマーを結合させます。
③伸長反応:耐熱性DNAポリメラーゼによってDNA鎖が合成されます。

①~③の3つのステップを繰り返し行うことでDNAが数時間で100万倍に増幅され、目的となる遺伝子の増幅が確認された場合にPCR陽性と判定されます。
そのため今回の場合はコロナウイルスに特異的な遺伝子の増幅が見られたらPCR陽性となります。
「TaKaRa PCR実験の手続き」より引用改変 
コロナウイルスを対象としたRT-PCR法では喀痰や気管吸引液、鼻咽頭拭い液を検査検体として使用しています。検査のために喀痰を出すことが大変な場合もあると思いますが、喀痰や気管吸引液にウイルス量が多いことが報告されているため、採取にご協力頂ければと思います。
COVID-19へのPCR検査(SARS-CoV-2核酸検出)が3月6日より保険適用となりましたが全ての人がPCR検査を受けられるわけではありません。下の図に従い医師が必要であると判断した場合にPCR検査を受けることになります。
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策本部資料 より引用
発熱の症状などがある場合、以下の受診の目安に従い「帰国者・接触者相談センター」へ相談することをお勧めします。
  • 風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている
  • 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある
日常における感染対策としてまずは手洗い、咳エチケットを心掛け、感染拡大防止へ向けて努めてまいりましょう。

Vol. 83, 2020. 3

微生物検査室 加藤美彩樹

*本検査に関するお問い合わせはご遠慮ください

参考文献