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CAPD管理に有用な臨床検査

皆さんは人工透析をご存知でしょうか。

人工透析とは腎臓の代わりに血液中の余分な水分や老廃物を取り除き、不足しているイオンを補う治療方法で、腎臓の機能が大幅に低下した場合に行います。

人工透析には大きく分けて2つの方法があり、透析中の患者さん全体の約95%は血液を介した血液透析が行われています。残りの5%はお腹の臓器を覆っている腹膜を利用した腹膜透析が行われており1)、今回はこの腹膜透析のひとつであるCAPDと、その透析効率や病態把握、合併症の診断に有用な臨床検査についてお話しします。

CAPDとはContinuous Ambulatory Peritoneal Dialysisの頭文字をとったもので、日本語では『連続的携帯式腹膜灌流』といいます2)。連続的という言葉の通りCAPDは、24時間継続的に腹膜透析を行う方法です。この方法では1回約30分の透析液交換を1日4回患者さん自身または介助者の方が行い、検査のため月に1~2回程度通院します。血液透析は週3回の通院で1回あたり約4時間行うため、腹膜透析は血液透析と比べると通院の負担が少なく、自宅で行える治療法です。透析液交換時以外は自由に行動ができるため日常生活へ復帰しやすく、患者さんそれぞれの生活スタイルに合わせた治療を行うことができます。また腹膜透析は残っている腎臓の機能を長持ちさせることができるという特徴があります3)4)

▲腹膜透析 透析液交換時
▲腹膜透析 透析液交換時

このCAPDで生じる排液は様々な臨床情報を有していることから、臨床検査の材料として広く利用されています。

まず、透析効率と病態の把握のために、CAPD透析排液中の尿素窒素、タンパク、ブドウ糖などの生化学検査が実施されています。このCAPD透析排液の測定結果と尿中の同じ項目の測定結果をもとに透析方法の適宜調整や、患者さんの栄養指導が行われます5)。生化学検査の中には、腹膜平衡試験というCAPD透析排液中のブドウ糖とクレアチニンの測定結果と血液中の同じ項目の測定結果から腹膜機能を評価し、現在の透析液量や交換回数が患者さんに適正かどうかを確認する検査もあります5)

また、腹膜透析患者の合併症には腹膜炎が多く、その診断のためにCAPD透析排液中の白血球の算定及び分類が行われています。この検査では、はじめに視覚的観察を行い、自動血球計数装置または顕微鏡を用いて腹膜の炎症等による白血球数の増加があるかどうかを調べます。通常、腹腔内は無菌状態でCAPD排液中の白血球数は5個/μL未満ですが、細菌の侵入などにより白血球が増加し、100個/μL以上となると腹膜に炎症が起きていることが考えられます。さらにCAPD透析排液中に直接細菌が観察される場合には、グラム染色という染色法を用いて細菌を直接染色し、細菌の染色態度(色調)や形態を観察して起炎菌の推定が行われます。精査をする場合多少時間を要しますがCAPD透析排液を培養検査することで起炎菌を特定し、その後、薬剤感受性試験を行うことで適切な抗菌薬の選択が可能となります5)

先に述べたように腹膜透析は血液透析と比較して患者さんの負担が少なく、患者さん自身で透析を行える利点があります。しかしながら腹膜機能の低下により腹膜透析から血液透析に移行する場合があるため、CAPDの手技を清潔に心がけることや定期的に通院して検査を受診し、予防や早期発見に繋げることが大切です。

検体検査というと血液検体を思い浮かべる方が多いと思いますが、血液検体以外でも多くの情報を得ることが出来ます。今回のコラムを通して、血液以外を対象とした検査の意義や方法などを少しでも知って頂けたら幸いです。

Vol. 92,2020.12

一般検査室 佐藤和花菜

参考文献

1)日本透析医学会雑誌 わが国の慢性透析療法の現状 2019年52巻12号679-754

2)CAPDハンドブック 第3版 監修 小川洋史 長屋敬 編集 新生会第一病院在宅透析教育センター 医学書院

3)よくわかるCAPD療法 腹膜透析のノウハウ 富野康日己 編集 医薬ジャーナル社

4)病気がみえるvol.8 腎・泌尿器 医療情報科学研究所 編集 メディックメディア 発行

5)一般検査技術教本 一般社団法人衛生検査技師会