健康寿命を延ばすためには『骨』にも目を向けて!

近年高齢化が進み、「人生100 年時代」といわれるようになりました。人々の健康への意識は高まり、生活習慣病やがんに意識を向ける方が増えてきたように思いますが、骨の健康に意識を向けている人は少ないのではないでしょうか。長く健やかな日々を送るためにも本コラムを通して骨の健康に意識を向けていただけますと幸いです。

骨のモデリングとリモデリング

人の身体は206個の骨の組み合わせで支えられています。骨には主に身体を支える、臓器を守る、カルシウムを蓄える、骨髄で血液成分を作る、の4つの働きがあります。
ヒトの誕生時に完成している骨は少なく、多くは軟骨や結合組織からゆっくりと形成され硬い層板状の骨へ成長(モデリング)します。モデリングはウォルフの法則(骨格にウエイトトレーニングや体重、重力などの力学的負荷が加わると新しい骨が形成されること)に従い行われ、成人の骨量の約90%は思春期の終わりまでに獲得されますので、成人期以降の増加はほとんどありません。
また、骨は一定の形を保っているようにみえますが、盛んに代謝が行われ常に作り替えられている組織であり、その構成成分は約120日かけて入れ替わります。この過程は再構築(リモデリング)とよばれ、同一部位のリモデリングはおよそ1〜4年周期で起こります。
リモデリングは骨吸収と骨形成で構成され、血液中に存在する破骨細胞(骨を壊す細胞)と骨芽細胞(骨を作る細胞)、骨細胞が関与します。
骨細胞は、感知した機械的・力学的刺激(骨組織の劣化や微小骨折)を他の細胞に伝達することができるので、リモデリングのトリガーとして働きます。

骨吸収と骨形成

骨吸収が開始されると副甲状腺ホルモン(PTH)が血中に放出され、破骨細胞を活性化します。破骨細胞は古く弱い骨の周囲に酸を分泌することで骨基質成分であるリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)を溶解し、骨から血中へとカルシウムとリンを遊離させます。骨吸収が起こった部位に骨芽細胞が誘導されⅠ型コラーゲンとオステオカルシンを主体とする骨基質成分が合成され血中のカルシウムとリンがハイドロキシアパタイトとして沈着することで石灰化が起こり骨となります(骨形成)。

リモデリングのバランスが崩れる原因

通常、骨のリモデリングは骨吸収と骨形成のバランスが保たれ全体の骨量は不変ですが、何らかの原因によりバランスが崩れ、骨吸収が亢進し骨量が減少すると骨粗鬆症などを引き起こす可能性があります。
この原因としてまず挙げられるのが閉経による女性ホルモンの減少です。女性特有のホルモンであるエストロゲンは、子宮や乳房の発育に作用することが広く知られていますが、骨代謝においても破骨細胞の活性を抑制することで骨量を一定に保つ役割があります。閉経により、エストロゲンの分泌が減少すると、破骨細胞は活性化し、骨吸収が骨形成を上回ることで骨量減少が引き起こされます。一方、男性ではエストロゲンの代わりに男性ホルモンであるアンドロゲンがその役割を担っていますが、閉経がないため女性よりも骨量減少は緩やかです。(図2)。

次にカルシウムとビタミンDの欠乏です。カルシウムは骨量全体の5分の1を占めており、歯や骨を構成する重要な物質です。体内では歯や骨に99%存在し残りの1%が身体機能の維持・調節に不可欠なミネラルとして血中に存在しています。
血中カルシウム濃度が低下すると骨のカルシウムが血液中に溶け出して不足分を補いカルシウム量を一定に保ちますが、骨からカルシウムが溶け出せばその分骨量は減るので、体内のカルシウム不足が続くと骨は弱くなってしまいます。
また、ビタミンDはカルシウムの腸での吸収を高めて骨形成を促進するため、骨粗鬆症予防において重要な役割を担っています。ビタミンDは肝臓や腎臓で活性化され、カルシウムとリンの調節を行うと共にPTH分泌抑制の働きを担っています。そのため、ビタミンDが低下した状態ではPTH分泌を抑制できず、破骨細胞が活性化されることで骨量の低下が生じます。

運動不足も骨量減少を引き起こす一因となります。骨に一定以上の負荷がかからない状態が続くと骨代謝を促進させる骨芽細胞の機能および増殖能が低下して新しい骨が形成されず、骨粗鬆症を引き起こします。例えば、高齢者の健康に関する概念であるフレイルやロコモティブシンドロームでは運動器の機能が低下するため骨に負荷をかけられず、骨形成が抑制され骨粗鬆症のリスクが高まります。

骨の状態を知る検査

私たち臨床検査技師はカルシウム、リン、PTH、エストロゲン、骨代謝マーカーを測定することで骨の健康状態を評価するための一助を担っています。骨代謝マーカーは主に骨粗鬆症の治療効果のモニタリングに利用され、臨床的に重要度の高いマーカーです。骨代謝マーカーとして利用されているのは、骨吸収に関係している酵素(破骨細胞が産生)、骨形成に関係している酵素(骨芽細胞が産生)、あるいは骨基質の代謝による分解産物(Ⅰ型コラーゲン)で、骨吸収マーカーと骨形成マーカーに分類されます(表1)。
これらのデータに加え、MRIやレントゲンの画像診断をもとに治療薬の選択や治療効果のモニタリングが行われます。

骨粗鬆症予防のアドバイス

骨の健康を維持し骨粗鬆症にならないためにはカルシウムとビタミンDを豊富に含む食品を摂取することです。カルシウムは魚介類や大豆製品、乳製品、野菜類、海藻類など、ビタミンDはキノコ類や魚介類に多く含まれ、日光浴でも体内で合成されます。カルシウムは摂取しても腸での吸収効率が悪く、多くは排泄されてしまうのですが、ビタミンDと一緒に摂ることでカルシウムの吸収効率が高まります。加えて定期的な運動も行いましょう。登山やランニング、縄跳びなどの体重負荷を利用し重力に逆らった運動は骨形成に効果的ですが、ウォーキングや穏やかなエアロビクス、軽い庭作業でも効果があります。無理のない範囲での運動がおすすめです。

Vol.121, 2024.1
臨床化学・免疫検査室 北宮 聡子

参考文献

  1. 最新臨床検査学講座 臨床化学検査学 医歯薬出版株式会社
  2. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版、骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン
    作成委員会(編)
    http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf
  3. NIH Osteoporosis and Related Bone Diseases National Resource Center. "Bone Health
    Basics: Get the Facts.
    https://www.niams.nih.gov/health-topics/bone-health-and-osteoporosis#get-facts 
    Accessed on 2023-9-13
  4. National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases (NIAMS).
    "Osteoporosis: Peak Bone Mass in Women."
    https://www.niams.nih.gov/health-topics/osteoporosis#tab-overview 
    Accessed on 2023-9-13
  5. 紫外線環境保健マニュアル2020/環境省
    https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf
    Accessed on 2023-10-16
  6. イメカラ 内分泌・代謝 第1版 医療情報科学研究所 2017

投稿者:管理者

トップページに戻る

Top