子宮頸がんの予防と検査
2025年11月13日はじめに
婦人科がんである子宮がんには、子宮の入り口である子宮頸部にできる「子宮頸がん」と、子宮の奥である子宮体部(内膜)にできる「子宮体がん」があります。「がん」とは、遺伝子変異によって細胞が無秩序に増えながら周囲にしみ込むように広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛び火(転移)する悪性腫瘍です1)。今回はウイルスが主な原因である子宮頸がんの予防と検査についてお話しします。
子宮頸がんについて
世界では年間約66万人、日本では約1.1万人の方が子宮頸がんに罹っており、20代後半から増加しはじめ、30代から50代で多いことが知られています2,3)。子宮頸がんの主な原因は、性交渉などにより子宮頸部粘膜の上皮細胞にヒトパピローマウイルス(HPV)が持続的に感染することによります3)。HPVは子宮頸がん以外にも、外陰がん、陰茎がん、中咽頭がん、皮膚がんなどの原因となることが知られており4)、200種類以上の型に分類され5)、主にハイリスク型とローリスク型の2つに分けられます。HPVに感染してもほとんどが一時的であり、免疫機能(ウイルスや細菌などの外敵から体を守るしくみ)により自然消滅します3,4)。しかしハイリスク型は発がん性が高く、子宮頸がんや前がん病変(がんになる前の段階)から高頻度に検出されることが知られており、子宮頸がんの95%以上はHPVが子宮頸部に2年以上持続感染する(ウイルスが体から排除されず、長期間にわたって感染状態が続く)ことが原因として考えられています2,5)。前がん病変には子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)や上皮内腺がん(AIS)という状態があり、これを経て子宮頸がんになるとされています2)。
予防について
子宮頸がんの予防にはワクチンと検診が有効です。HPVワクチンは小学校6年~高校1年相当の女子が対象となる定期予防接種です6)。日本では2013年に定期接種が始まりましたが、副反応により一時的に積極的な推奨が中止されました。しかし、世界保健機関(WHO)がワクチンの安全性について発表し、2022年4月に積極的な推奨が再開されました7)。一方、検診は20歳以上の女性が対象であり、公費で受けられる自治体もあります。内容としては問診・視診の次に内診・細胞診をし、がんが疑われ精密検査が必要となった場合にHPV検査、細胞診、組織診などを組み合わせて検査をします(図1)2)。一部の自治体では問診・視診の次にHPV検査を行うHPV検査単独法が行われており、HPV検査が陽性時に細胞診をし、精密検査が必要となった場合に組織診を行います(図2)2)。子宮頸がんの初期や前がん病変の時期はおりものの変化や出血や痛みなどの症状がないことが多いため、症状がなくても定期的に検診を受けることが大切です。

検査について
子宮頸がんの診断には図1や2に示す検査を順番に行っていきます。子宮頸部をブラシでこすって細胞を採取し、良性か悪性かを顕微鏡で調べる細胞診、同様の採取方法で採取した細胞からハイリスク型HPVに感染しているかを調べる検査がHPV検査です。細胞診やHPV検査の結果によりCINやAIS、がんが疑われた場合、病変が疑われる部分から組織を採取し、細胞の形や構造に異常がないか顕微鏡で調べる検査が組織診です。これらの検査の結果、がんと診断された場合は超音波検査やCT検査、MRI検査、PET検査などを適宜行い、体全体にがんが広がっていないかを詳しく確認します。また、膀胱や直腸の内視鏡検査でがんの広がりの有無を確認することもあります。血液検査では、がんの補助診断や診断後の経過、治療効果をみるための腫瘍マーカー検査を行うことがあります2)。腫瘍マーカーは、正常細胞ではほとんど作られず腫瘍細胞特異的に作られる物質、または腫瘍細胞が生体内にあることによって作られる物質、と定義されていますが4)、腫瘍マーカーの値だけではがんの有無や場所は特定できないため他の検査と組み合わせて総合的に判断されます。子宮頸がんの多くは扁平上皮がんであり、約20%は腺がんと言われているため4)、扁平上皮がんのマーカーであるSCCや、大腸がんをはじめとする腺がんのマーカーであり幅広いがん診断に使用されているCEA、また卵巣がん・子宮体がんのマーカーであるCA125などを測定しています4)。当院臨床検査部ではHPV検査は外注項目となるため、検査結果が得られるまでに1週間ほど時間を要しますが、腫瘍マーカーの検査結果は1時間ほどで得られ、当日中に臨床に報告が可能となっています。
まとめ
国民の半数ががんに罹患する時代となりました。ワクチンの接種や積極的に検診を受けることで子宮頸がんは予防が期待できます。検査結果を正確・迅速に提供することが、わたしたち検査部にできる早期発見・早期治療の一助と考え、日々業務を行っています。
参考文献
- がん情報サービス がんという病気について
https://ganjoho.jp/public/knowledge/basic/index.html(Accessed on 2025.11.5) - がん情報サービス 子宮頸がん
https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/index.html(Accessed on 2025.11.5) - World Health Organization.「Cervical cancer」
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/cervical-cancer(Accessed on 2025.11.5) - 黒川 清,春日雅人,北村 聖編.臨床検査データブック 2021-2022.東京:医学書院;2021.
- 十川佳代,片野田耕太編.子宮頸がんとその他のヒトパピローマウイルス(HPV)関連がんの予防 ファクトシート2023.国立がん研究センター がん対策研究所.
- 厚生労働省 HPVワクチンについて知ってください 子宮頸がん予防の最前線
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202205_00001.html(Accessed on 2025.11.5) - 中島隆広,川名 敬.子宮頸がん治療とHPVワクチンの現状について.日大医誌.2022;81(6);325-328.
臨床化学・免疫検査室 原澤 彩貴
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