糖尿病関連検査を整理しよう!!

はじめに

糖尿病関連の検体検査は、糖尿病の診断や治療、血糖コントロールに必要不可欠です。検査項目は多岐にわたり、それぞれが異なる役割を担っています。当院臨床検査部では患者さんの血液検体、尿検体等を材料として、正確且つ速やかに検査を実施しています。今回のコラムでは、糖尿病に関連する代表的な検体検査について紹介します。さらに、血糖値と生活習慣の関係や、実際に糖尿病患者さんから伺った生活習慣についても紹介します。

①血糖(Glu) 【当院基準範囲:73~109(㎎/dL)】

血糖検査は、エネルギー源となる血液中の含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度を調べる検査です。食事をすると血液中のブドウ糖の濃度が高くなり、食事の内容や量、日常の活動量などの影響を受けます。そのため、食事の影響を受けないように8時間以上(通常は10時間前後)絶食した状態で検査を行う「空腹時血糖」と食事の有無にかかわらず採血時の状態で測定する「随時血糖」があります。
また、採血する部位によっても血糖値は異なり、一般的に「動脈血>毛細血管血>静脈血」の順に高い値を示します。このため、検査結果を評価する際には採血条件に注意が必要です。

②HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) 【当院基準範囲:4.9~6.0(%)】

過去1~2か月(特に直近1ヶ月)ほどの平均的な血糖の状態を反映する検査です。日々の血糖の変動に左右されにくいため、血糖コントロールの指標として広く用いられています。また、糖尿病の診断基準にも用いられており、国際的な標準値(NGSP値)に基づいて評価されています。良好なHbA1c値の維持は、糖尿病合併症の予防にも重要とされています。
この検査は、赤血球中のヘモグロビン(Hb)にブドウ糖が結合している割合を測定しています。このため、赤血球の数が少ない、濃度が薄い状態である貧血、物理的要因等で赤血球が壊れた状態の溶血、また透析患者さんなどの赤血球寿命が変化する病態では結果の解釈に注意が必要です。透析治療が必要となる透析患者さんは、腎臓で作られるエリスロポエチンと呼ばれる造血ホルモンが充分に作られなくなること、腎臓の機能が低下した体内環境下では赤血球が壊れやすくなる腎性貧血という状態になることがあります。

③GA(グリコアルブミン) 【当院基準範囲:12.4~16.3(%)】

血液中のアルブミンというたんぱく質にブドウ糖が結合した割合を測定する検査です。HbA1cと比較して、より短期間(おおよそ過去2~3週間)の血糖コントロールを反映する指標で、血糖値が改善した場合には、HbA1cよりも早く低下するという特徴があります。また、食後高血糖や1日の血糖変動を敏感に反映することから、血糖の変動が大きい患者さんのコントロール指標として有用です。さらに、赤血球の影響を受けないため、透析患者さんや貧血など、HbA1cの解釈が難しい場合にも有用な検査として活用されています。

④1.5-AG(1,5-アンヒドログルシトール)【当院基準範囲:14.0以上(μg/mL)】

1.5-AGは、ブドウ糖に酷似した構造を持つ糖アルコールの一種です。体内に豊富に存在し、腎臓の糸球体で濾過された後、腎尿細管で約99%以上が再吸収されますが、血糖値が上昇して尿糖が出現すると、構造が似ているブドウ糖と1,5-AGが再吸収の段階で競合(拮抗阻害)を起こします。これにより1,5-AGが再吸収されずに尿中へ排泄されてしまうため、血中1,5-AG濃度は低下します。GAより短期間(数日~1週間程度)の血糖コントロールを反映する検査です。

⑤インスリン 【当院基準値:18.7以下(μIU/mL)】

インスリンは、血糖値を下げる働きをもつホルモンであり、その血中濃度を調べる検査です。インスリンは、血液中のブドウ糖を筋肉などの末梢組織へ取り込ませるとともに、肝臓から血液中へのブドウ糖の放出を抑制することで、血糖値を低下させます。この検査により、インスリンの分泌状態を評価することができます。

⑥C-ペプチド 【当院基準値:0.67~2.48(ng/mL)】

C-ペプチドは、インスリンが作られる過程(プロインスリンが分解される際)でインスリンとともに分泌されます。インスリン分泌能の評価に有用であるため、糖尿病の病態分類や治療方針の決定にも役立つ検査です。 

⑦尿糖

尿中の糖の有無を調べる検査です。通常、尿中に糖はほとんど排泄されませんが、血糖値が約180 mg/dL前後(個人差あり)を超えると尿中に糖が出現するようになります。尿糖は糖尿病の診断基準には含まれていませんが、健診などのスクリーニング検査として広く用いられており、糖尿病診断のきっかけになる検査です。

⑧自己抗体

1型糖尿病において、自己免疫性(約9割)と特発性(約1割)の鑑別のために行う検査です。代表的な自己抗体検査には抗GAD抗体、抗IA-2抗体、抗インスリン抗体(IAA)などがあり、これらを測定することで病態の理解や診断の補助に役立ちます。

血糖値と生活習慣、及び体験談

血糖値は日々の生活習慣に影響を受け、その乱れにより血糖値が上昇するリスクがあります。特に食事、運動、睡眠、ストレスが要因とされています。
食事においては、糖質の摂りすぎに注意し、脂質は控えめにして、できるだけ多くの食品の種類を取り入れたバランスの良い食事を心がけると良いでしょう。また、食べる速度は、ゆっくりと時間をかける、量は腹八分目を意識すると良いです。糖質のドカ食い、早食いをすると糖質が一気に吸収されて、血糖値が急上昇し、その後大きく低下します。血糖スパイクと呼ばれる現象で、食後の眠気やだるさが起きやすくなります。放置すると、血管にダメージを与え、動脈硬化や糖尿病のリスクを高めるので気を付けましょう。
運動は、体内のブドウ糖をエネルギーとして消費し、インスリンの抵抗性(インスリンの効きにくさ)の改善に役立ちます。1回30分程度を週3回など、無理のない範囲で継続することが重要です。運動する時間が取れないときは、エレベーターではなく階段を使用する、一駅分歩いて帰る、なども効果的です。体調に合わせた運動の実践が推奨されます。
睡眠不足は血糖値を上げやすくし、ホルモンバランスが崩れ、食欲増加につながります。
また、ストレスが増すとコルチゾールというホルモンが分泌され、血糖値上昇につながることがあります。ストレス解消法は人それぞれですが、食べることで発散する場合は内容や量に注意することが大切です。

次に、実際に糖尿病患者さんから伺った生活習慣についてご紹介します。

【良い生活習慣】

私は、ベジファースト(野菜から先に食べる)、低GI(血糖の上昇率の低い)食品を取り入れる食事を意識しています。また、週に2回程度のランニングと、日常生活においてなるべく階段を使うように意識しています。より良い睡眠のために就寝前にスマホを見すぎないように日々気を付けています。

【改善したほうがよい生活習慣】

生活習慣①
「工事現場で働いていて夏に熱中症が怖くて清涼飲料(スポーツドリンク)を2Lのペットボトルを2本、毎日飲んでいた」
→清涼飲料水には糖が含まれています。糖分の多い飲料を大量に飲むと血糖値が上がりやすくなります。水や無糖の飲み物を組み合わせる工夫も大切です。

生活習慣②
「フルーツをとった方が良いとテレビで言っていたので缶詰のフルーツを全部食べた。シロップはもったいないので氷と水でうすめて全部飲んだ」
→フルーツの缶詰はシロップにつけてあり、糖分が多いため、量の調整が必要です。また、シロップの摂取には注意が必要です。一般に100gあたり糖質約15~20g入っているとされます。

生活習慣③
「時間が不規則な仕事をしていて1日1食で夜中にたくさん食べている」
→血糖値が急激に上昇・下降する「血糖スパイク」を引き起こし、血管に悪影響を与えます。食事は一回にまとめ過ぎず、規則的にとることが望まれます。

おわりに

糖尿病は、早期発見と継続的な管理により合併症を予防することで、健康な人と変わらない日常生活を目指すことができる病気です。今回紹介した検査項目を上手に活用し、糖尿病について少しでも関心を持ち、日々の生活を見直すきっかけとしていただければ幸いです。私自身も本コラムを通じて生活習慣を振り返り、加齢とともに変化する身体と生活習慣について向き合う大切さを改めて実感しました。今後も、検査を通じて皆様の健康維持に貢献できるように努めてまいります。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会(編著):糖尿病治療ガイド2024 南江堂
  2. 検査と技術 糖尿病のすべて。検査データに基づいた診療のポイント vol.54 No.2 2026 医学書院

Vol.134,2026.6
臨床化学・免疫検査室 平安山 良彦

投稿者:管理者

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