白血病の種類を見分けるMPO染色

“血液のがん”とも呼ばれる白血病。皆さんも一度は耳にしたことがある病名かと思います。今回のコラムでは急性白血病の診断に欠かせないMPO(ミエロペルオキシダーゼ)染色をご紹介します。

血液中の血球成分である赤血球・白血球・血小板は骨の内部にある骨髄という場所でつくられています。骨髄では、すべての血球の元となる造血幹細胞が段階を踏んでそれぞれの血球へと成熟していきます。そして、十分に成熟して働ける状態になった血球だけが全身を巡る末梢血へ送り出されます。急性白血病では、この成熟の過程にある未熟な細胞が“がん化”して無制限に増殖するようになり、正常な血球がつくれなくなります。その結果、貧血や出血傾向などの症状が現れます1)。また、がん化した細胞(白血病細胞)がどの系統の性質を示すかによって急性白血病の種類が分かれます。リンパ球以外の白血球、赤血球、血小板のいずれかの性質を示す場合は「急性骨髄性白血病」、リンパ球の性質を示す場合は「急性リンパ性白血病」と大まかに分類されます1)。この分類は治療方針を決定する上でとても重要となります2)

急性白血病が疑われた場合、末梢血や骨髄を標本にして、白血病細胞が存在するかどうかを顕微鏡で詳しく観察します。(骨髄の検査については【血液の工場「骨髄」の検査 | 東邦大学医療センター大森病院 臨床検査部 コラム】もご覧ください)。観察の際は、細胞の大きさや形、染まり具合といった見た目の特徴から通常の血球細胞と白血病細胞を見分けています。さらに、細胞の特徴から「急性骨髄性白血病」か「急性リンパ性白血病」かを推測できることもあり、特に分かりやすい特徴として、白血病細胞の中に細かい顆粒が観察される場合は急性骨髄性白血病が強く疑われます。しかし白血病のタイプによっては細胞の見た目が非常に似ていて、形だけでは骨髄性かリンパ性かを区別できない場合があります。実際、写真1(急性骨髄性白血病)と写真2(急性リンパ性白血病)では、矢印で示した白血病細胞の大きさや形、染まり方がよく似ており、これらの情報だけで骨髄性かリンパ性かを判断するのは困難です。このような場合に役立つのがMPO(ミエロペルオキシダーゼ)染色です。MPOとは好中球など骨髄系の白血球に含まれる強力な殺菌作用をもつ酵素であり、細胞内のMPOを染色することでその細胞が骨髄系であることを証明できます1)。写真1と写真2の症例をそれぞれMPO染色した結果が写真3と写真4です。写真3では白血病細胞のMPOが茶褐色の顆粒状に染色されています(矢印)。この場合、白血病細胞は骨髄系であると判断できるため、急性骨髄性白血病と診断されます。一方、写真4では白血病細胞に茶褐色の顆粒が認められません(矢印)。このようにMPO染色で染色されない場合は、急性リンパ性白血病もしくはMPO染色で染色されないタイプの急性骨髄性白血病の可能性があるため、その他の検査結果を総合して診断する必要があります。

  • 〈写真1〉急性骨髄性白血病標本

    〈写真1〉急性骨髄性白血病標本

  • 〈写真2〉急性リンパ性白血病標本

    〈写真2〉急性リンパ性白血病標本

  • 〈写真3〉急性骨髄性白血病標本 MPO染色 

    〈写真3〉急性骨髄性白血病標本 MPO染色:白血病細胞が茶褐色の顆粒状に染まっている

  • 〈写真4〉急性リンパ性白血病標本 MPO染色

    〈写真4〉急性リンパ性白血病標本 MPO染色:白血病細胞が茶褐色の顆粒状に染まっていない

急性白血病は骨髄性とリンパ性の中にもさらに細かい分類があり、MPO染色に加えて、その他の成分を染める染色法や、細胞の種類を詳細に調べられるフローサイトメトリー検査、遺伝子・染色体検査などを組み合わせて診断を確定します2)。これらの検査結果が分かるまでにかかる時間は、施設によって異なりますが、フローサイトメトリー検査や遺伝子検査は当日~数日、染色体検査は数週間程度です。これに対してMPO染色は30分程度の短時間で結果が得られることから、早期の診断・治療に役立ちます。急性白血病は病状の進行が速く、迅速な対応が求められる疾患です。私たち臨床検査技師は急性白血病が疑われるような検査結果が得られた場合、医師と情報共有を行い、適切な診断・治療を行えるようサポートしています。

参考文献

  1. 病気がみえる vol.5 血液 メディックメディア
  2. 血液病レジデントマニュアル 第4版 神田善伸

Vol.135,2026.6
血液検査室 下平 貴大

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