自分に合っている状態に近づけるには

自分に合っている状態に近づけるには


その人に合った薬に出会う-症状に合わせた薬- 【西井 ヘルベルト】

皆さんは自分の飲んでいる薬をどのような物だと考えて飲んでいますか?本当は病気になんか全然効果がなくてただ副作用だけがあって辛いものだとか、一日に何回も飲まなくちゃいけないから本当は面倒だなと思っていたり、実は病気なんかじゃないのに周囲の人がうるさく言うからしぶしぶ飲んでいる、周囲の人達がいなければ本当は飲みたくないのになんて考えていませんか。外来などで患者さんとあったりするとそのような事をおっしゃっている方や薬を飲むのを実際に止めてしまって再び症状が悪くなったと言って外来に来たり、入院なさってしまう方をよく見かけます。このようなことになってしまうのは治療者側からしても残念なことだし、みんなにとっても残念なことだと思います。そのようなことにならないためにどのようにしていったらいいのでしょうか。
統合失調症という病気は様々な症状が出てくる病気です。その症状は皆それぞれ違った症状がでます。例えば幻覚・妄想といったとても奇妙で不思議な、苦痛を伴った体験をします。まわりの様子や出来事がとても奇妙で恐ろしく感じるようになり、道で普通に走っている自動車の音が気になり、鳥の鳴き声や人々の話している声がなんだか自分に関係があるかのように感じるようになます。まわりの人達が話していることが自分の悪口を言っているように感じたりします。時にはテレビで自分のことを放送しているように思ったり、電波を使って自分に頭の中にメッセージを入れてきたりします。そのメッセージに対して反論すると言い返してくるので言い合いになってしまうこともあります。また、なんだか以前のように積極的に物事に取り組もうとする意欲が無くなって部屋に引き篭もるようになってしまったりします。最初はなんとなく学校を休みがちになり、勉強に興味が持てなくなって成績が下がたりします。おしゃれが好きだったのにお化粧をしなくなったり、流行の洋服を着なくなったりします。友人とあって楽しいおしゃべりを楽しんでもその会話についていけなくなり、やさしい内容の小説を読み返しても意味がよくつかめなくなって苦労するような症状がでます。これらの症状を減らし、感じなくするようにしてくれるのが薬の役目です。薬以外にも心理的サポートや環境調節といったことも大切ですが、それらを行う上でも辛い症状を減らしておくことは大事なことです。
これらの薬を私たちは抗精神病薬や精神安定剤、神経安定剤などと呼んでいます。ここでは精神面の変化を静めてくれるという意味で、神経安定剤と呼ぶことにします。これら神経安定剤は多くの種類があり、作用も様々です。でもどの薬にも共通して見られる作用は幻覚や妄想を減らし、消してくれる抗幻覚・妄想作用。興奮や不眠、いらだち、いらいら感などやわらげてくれる鎮静作用。そのほか一般的な薬にもあるような副作用、例えば口の乾き、便秘、立ちくらみ、眠気、かすみ目、肝機能障害、食欲の亢進などがみられます。特に最近の新しい神経安定剤はこれらの副作用をできるだけ減らすことを目標に開発されるようになっています。しかし、先ほど書いたように皆さんの症状が必ずしも同じではないことが問題になります。副作用が嫌だから新しい薬に変えたい気持ちもよくわかります。でも、その薬が必ずしも自分にあうかどうか判らないからです。主治医の先生に頼んで新しい薬に変えても症状が悪くなったなんてことも少なからずある事実です。では、実際に薬をどのように決めていったらよいのでしょうか。
統合失調症は長期間の治療が必要な病気です。必然的に神経安定剤も長期間服用を続けてもらわなければなりません。そうなると重要なのは医療者と皆さんとがよく話しあって共同で薬を作っていく関係が必要になってくることです。外来の診療場面で今飲んでいる薬の名前を聞いたり、現在自分が感じている副作用を伝えることはとても大事です。そして今自分達が望んでいる薬をぜひ伝えてみてください。そうすることでよりいっそうお互いの関係が深まり更に話し易くなるでしょう。それ以外にも薬を変えるのではなく、自分のあった形に変えることができます。薬のそのものを錠剤から粉末、最近では水薬や水がなくても飲めるような物まであります。薬が面倒ならデポ剤というのもあります。1ヶ月に1回筋肉内注射を行うだけで薬を飲むという煩わしさから開放されますが、やはり主治医の先生とよく相談してこの治療法が自分にあっているか話しあうことが大切です。薬の形だけでもこれだけの方法がありますが、それ以外にも飲む回数を工夫し薬の形と組み合わせることで更に自分にあった薬になってくるでしょう。例えば1日に3回や4回飲まなければならない薬を1日に1回や2回に減らしてもらうだけでも生活スタイルは変化するでしょう。今まで外出するときに必ず薬を持っていたのが、持っていかなくてもすむのですから。ただし作用時間の長い薬や短い薬がありますから、ここでもよく主治医の先生と相談してください。
このように薬の飲み方などを工夫をするだけで自分の状態や症状、生活スタイルにあった薬に変えられるようになります。とにかく大事なことは医療者と治療側が十分にコミュニケーションをとることです。それと自分達の薬が1回でぴったりあうことはそんなに多いことではありません。是非みなさんきちんと薬を飲んでこんな状態になった、こんな副作用があったと話してください。一生懸命治療に向かっていってくれる姿を見せてくれれば医療者も早くよくしてあげたいという気持ちになるものです。
ぜひ明日からでも試してみてください。

ワンポイントアドバイス

東邦大学医学部精神神経医学講座
〒143-8541 東京都大田区大森西6-11-1 TEL:03-3762-4151
COPYRIGHT 2008 IL BOSCO ALL RIGHTS RESERVED.
本サイトは、厚生労働省・平成19年度障害者保健福祉推進事業「精神障害者の早期発見、早期治療のための地域生活支援体制のあり方に関する調査及び機能分化したリハビリ施設の試行的事業」(東邦大学)の補助金により作製されました。