家族ができること

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再発のサインを知る-再発予防- 【武士 清昭】

これまでは統合失調症の原因や症状、そしてそれらに対する治療と治療に伴う副作用などについてお話をしてきました。病気に対する治療が効果を発揮してくると、病気の症状は徐々に軽くなって、社会復帰を目指せるような安定した状態になってきます。この状態の中で気をつけることの上で大事なことの1つが、今回のテーマであります再発を予防する、ということになります。
しかし再発を防ぐ、と簡単に言っても発見が遅れたり対処が遅れることは少なくなく、この遅れにより病気は慢性化し、生活もリズムが乱れたりするなどの悪影響がどんどん広がってしまいます。このため、再発徴候も早期発見・早期治療が重要なのです。
再発はある日突然気づかれることのように思われる方もいらっしゃるかともおられるかと思いますが、実は違います。人によって再発までの期間は異なりますが、明らかな再発の数日~数週間前には再発を予見させるような兆候が出ています。ですから、ご家族にできることの一つ目はこの再発の兆候、サインに気付いてあげる、あるいは本人が気づけるように協力するということになります。我々はこのサインを「早期警告サイン」と呼んでいます。
早期警告サインは、初めは主に大きな強いストレスにさらされた時にそのストレスに対する反応として出やすい、ということが知られています。ストレスと病気の関係については、第1回のストレス脆弱性モデルをご参照ください。この反応は主に体や心の変化として出やすいことが知られています。ストレスに対する反応を表1にまとめてみましたのでご参照ください。
表1
ストレスに対する反応
不眠 頭痛
食欲の亢進あるいは減退 腹痛
不安感 吐き気、嘔吐、下痢、便秘
緊張感 腰痛や肩こり
イライラ 疲れやすさ、だるさ
ではストレス以外に再発の原因となるものはないのでしょうか?再発と関係することが多いものを以下に列挙します。
  1. 抗精神病薬の内服を中断すること
  2. 身体上の健康問題
  3. アルコールや覚せい剤などの違法薬物を多量に摂取すること
今あげた1に関しては別の機会に病気に対する知識、ということとあわせてご理解いただけるとよろしいかと思います。
ストレスが増加した場合、あるいは上記の問題が起きた場合、あるいは両者が合わさってしまった場合に精神障害の再発の早期警告サインが出現します。ストレスの反応の場合は多くは一時的なものですが、早期警告サインは強度が増したり、持続したりします。これらはストレスへの反応と比べると、さらに生活への支障が大きいものですから、早期の対処が必要になります。早期警告サインとして出やすいものを表2にまとめてみましたので、そちらをご参照ください。
表2
再発の早期警告サイン
周りの物事に興味がなくなる 言葉数が過度に増えるあるいは減る
家族や友人と普段と同じようにコミュニケーションがとれない 周囲の状況や感覚、あるいは自分自身が変わったように感じる
忘れっぽい 感覚(5感)が変わったように感じる
集中できない 緊張やイライラが止まりにくい
リラックスできない 頭痛など体の痛みが取れない
不眠 疲れやすく、疲れもとれない
では早期警告サインが出現した場合、具体的にはどのように対処していったらよいでしょうか?
早期警告サインにもしご家族が気付かれたとしても、ご本人がその変化を自覚されていないことも多くあります。このような場合、ご家族が本人を心配して助言をされても、かえってご本人が気分を悪くされたり、状態を悪くしてしまうことがあります。このような状態を防ぐためにも、ご本人が落ち着いている状態のうちにお互いにサインを把握しておくこと。そして、サインにご本人よりご家族が先に気付いた場合にどうするかを決めておく必要があります。実際の介入には主治医や地域の支援者の協力が必要なことも多くありますので、普段からの備えを十分にしておくことが、再発を早期に発見し、そして予防することにつながります。具体的な方法は参考書籍などをご参照ください。
参考
水野雅文ほか著 精神科リハビリテーション・ワークブック 第9章早期警告サイン 中央法規 2,200円

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