再発予防のキーワード

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なぜこの病気になったの?-脆弱性ストレスモデル- 【水野 雅文】

脆弱性ストレスモデルはズビンが提案した再発予防のためのモデルです。図をご覧ください。
人の身体には誰しも比較的に上部な部分と、ストレスなどの負荷がかかると脆(あやう)い部分があります。その脆さのことを脆弱性と呼びます。ストレスがかかったときに、胃腸に症状が出る人、動悸など心臓に症状が出る人などさまざまですが、一般に精神障がい者は精神症状を呈しやすい人ということもできるでしょう。脆弱性が高いということは、この図1の1(ストレスに耐えられる閾値)が相対的に低いというふうに考えられます。そこへ思いがけないストレス2(これを「ライフイベント」とも呼びます)が加わると、やすやすと1を超えてしまい再発や再燃が起こります。脆弱性の低い人(1が高いところにある人)が羨ましいなとは思いますが、持って生まれた体質はなかなか変えることができません。
図1 脆弱性ストレスモデル

そこで、このモデルを参考にして脆弱性をできるだけ補えるようなストレスへの対処方法を考えてみましょう。図2をご覧ください。
図2 脆弱性ストレスモデル

私たちが日々生活をする中には、通勤や通学、あるいは日々の生活の心配、職場や家庭の人間関係など恒常的に存在するストレス(3)があります。こうした日常的なストレスに対しては、Aのように平素からより低いほうへ向かうような取り組みが大切です。人間関係の工夫をはじめとするストレスマネジメントも有効でしょうし、経済的な問題には福祉サービスなどの社会資源の活用も有効です。
思いがけないストレスとしては親しい人の死や失業、学業や試験の失敗、失恋や離縁も入りますが、結婚や出産などおめでたく嬉しい話でも脳の立場から見るとストレスになります。普段慣れている環境や日常の変化は、内容が良いことであっても悪いことであっても、生体にとってはストレスです。風邪や発熱、事故や怪我も思いがけないストレスです。こうした事態に遭遇したときにも、落ち着いて対処し、脳やこころがその事態をより小さく感じられるように対処すること、これをコーピング(対処方法)Bと呼びます。上手なコーピングをすることで、大きな不意打ちに対しても小さく感じることができ、結果的にストレスの合計が1を超さずに済ませることができます。このような対処技能の向上やストレスマネジメント、さらに社会資源の活用などを心理社会的治療と呼びます。
これに対してもう一方で重要なのが、薬物療法です。お薬を飲むことは、いつまでも病気でいるようで嫌だとか、副作用が出るかも知れないから気が進まない、という理由から服薬が不規則になることがあります。しかしお薬は、Cに示すように、ストレスに耐えられる閾値を高く支える強力な味方です。お薬がなぜ効くかについては別の機会に詳しく説明しますが、まずは脆弱性を低下させる(1を高く保つための)大事な手段であることをご理解ください。
このように、恒常的な生活上のストレスを低下させ、思いがけないストレスを小さく感じることができ、ストレスに耐えられる閾値を高く維持することにより、再発しにくい状態を整えることができます。ストレスマネジメントやコーピングの技法についてはたくさんの書籍が出ていますのでご参照ください。
参考
水野雅文ほか著 精神科リハビリテーション・ワークブック 中央法規 2,200円

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