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病気を知ることは重要です

病気を知ることは重要です
オーストラリアの研究では悪化してしまった精神疾患を持っている人々の75%以上の人が、25歳以前に発病し、18歳から24歳の間に発病している人の数が最も多かったそうです。

このような障害は若い成人の生活に重大な影響を与える可能性があるものです。人々が診断と治療の重要性にいち早く着目することは重要なことです。また世界的に、統合失調症になると平均10年ほど個人の寿命が縮むとも言われています。

米国大学健康機構は2004年に47202人の学生の調査をし、40%以上の大学生が精神疾患(=心の病気)によって何らかの機能の障害をもっていることを発見しました。この調査によれば米国の10の大学で、大学生の死因の第2位が精神疾患であるとしています。きちんと専門家に相談していれば、失わずに済んだ命もあると思われ、大変残念な結果ともいえます。

思春期は個人の人生において心身共に大きな変化の時期であり、正常な思春期の一部分として重い精神障害の徴候を見ることもあります。外国人のJさんは躁うつ病で28歳のときに自殺を試みた経験をもとに現在ではある確信を得ています。

その確信とは「精神保健サービスは、大学の情報提供の一部分としてあるべきで、学生と両親は病気の徴候や症状についての情報を知らされているべきであり、それは最大の備えである」ということです。精神科やメンタルヘルスの情報を誰も教えてくれなかったことを、彼はとても残念に思い、その重要性を説いています。

実際精神疾患についての知識を教えてくれる学校はごくわずかです。そして、多くの若者が精神疾患の知識を持つことはとても重要です。読者の皆さんは「知るべき人」なのです。
統合失調症は脳細胞の情報伝達機能の不具合によって起こる疾患です。
病気を知ることは重要です
一人の若者が統合失調症になったとき、その家族や友人は、理由は良くわからないのに、いつもと何かが違っていることに気がつくものです。そして、本人がその変化に気づいていないこともよくあります。周囲の「気づき」は重要なことで、その助けなしには本人が必要な援助につながることができない場合があります。

もし統合失調症を治療しないでおくと結果は深刻なものになるため、その気づきによって早く援助を求めることは良いことであるといえます。

統合失調症の罹患率は世界中のどこでも大体同じです。先進国の国々では統合失調症は障害の原因疾患としてトップ10以内に入っています。研究報告によると、統合失調症の親がいる場合、子供の約10%が統合失調症になると言われ、一般の約1%の発症リスクより高くなります。遺伝情報が同じである一卵性双生児の場合は、片方が罹患していると約50%内外が一致して発症しますが逆に考えれば残りの半分は発症しません。この事実から環境因、ストレスのようなものも危険因子として考えられています。

研究報告では統合失調症の発病年齢は女性のほうが遅い傾向があります。世界中の研究報告によれば女性の発症年齢は男性より、3〜6歳も遅いとされています。男性の発症年齢は通常10代後半から20代前半です。女性の発症年齢はしばしば20代から30代はじめくらいとなります。しかしながら年齢の差はあっても発症率の性差はないことが分かっています。また、たくさんの研究では女性の方が病気の予後が良いことが分かっています。統合失調症の患者さんの場合、一般人口に比べて自殺の危険が高く、特に治療をやめてしまったあとで自殺リスクが急に上がるとされています。

20世紀半ばの精神科治療薬の出現やその後の薬の改良、社会のケアの改善や障害に対する知識の普及などにより、統合失調症の予後もだいぶ良くなっているといわれ、WHO(世界保健機構)は以下の統計を発表しています。

・約45%の患者さんが精神病の発病や再発から快復しています。
・約35%の患者さんは混合パターンで様々な快復や悪化を繰り返しています。
・約20%の患者さんにおいて症状の持続や障害の悪化が観察されています。

良くなっているとは言っても、なかなか現実は厳しい数字といえます。統合失調症は時にうつ病などの他の精神障害と区別することが難しくそれぞれの治療法は異なるため、統合失調症の見極めは重要です。早期発見・早期治療は今後の治療成績向上の鍵となります。

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