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双胎間輸血症候群について

双胎の膜性分類と一絨毛膜性双胎

双胎間輸血症候群(Twin-to-Twin Transfusion Syndrome:以下TTTSと略します)とは、一絨毛膜性双胎の約10%に発症する疾患です。

一卵性の双胎(双子)は受精卵が分かれる時期によって、二絨毛膜性双胎と一絨毛膜性双胎の二つに大別されます。さらに、一絨毛膜性双胎双胎は、その内側の羊膜の数によって、一絨毛膜二羊膜性双胎と一絨毛膜一羊膜性双胎の二つに分類されます(表1)。
表1.双胎の膜性分類
卵性 絨毛膜(胎盤)の数 羊膜の数 名称 各卵性においての頻度
二卵性 二つ 二つ 二絨毛膜二羊膜 理論的には100%
一卵性
(約250妊娠に1回)
一つ 一つ 一絨毛膜一羊膜 1%
二つ 一絨毛膜二羊膜 約75%
二つ 二つ 二絨毛膜二羊膜 約25%
一絨毛膜とは“胎盤が一つ”という意味で、二絨毛膜とは“胎盤が二つ”という意味になります。つまり、一絨毛膜性双胎は一羊膜にしても二羊膜にしてもいずれも“胎盤が一つのふたご”になります。なお、このページでは詳しい解説は省きますが、三つ子(医学的には三胎と呼びます)の場合にも胎盤の数が、それぞれ一つ、二つ、三つの場合が起こります。

一絨毛膜性双胎について

一絨毛膜性とは“胎盤がひとつ”という意味です。つまり二人の胎児は一つの胎盤を共有しながら成長していきます。胎児の血液は、心臓から出た後に、臍帯(へその緒)動脈を通じて胎盤に送られます。胎盤の中の毛細血管(絨毛血管)を巡る血液は、その場で母体の血液との間で酸素や栄養素を受け取ります。その後、臍帯静脈を通じて胎児に戻ります。

胎盤が一つの場合、図に示しますように、一方の胎児から送られた血液が“吻合血管”を通じて他方の胎児に送られることがあります。このように一絨毛膜性の場合、吻合血管が存在して、胎児同士が血液をやりとりする状況が発生します。
一絨毛膜性双胎

双胎間輸血症候群について

双胎間輸血症候群(TTTS)は、一絨毛膜性双胎の約10%に合併すると言われています。二人の胎児循環のバランスが崩れた結果、一方が受血児(レシピエント)となり、他方が(ドナー)となります。

受血児となった胎児は、循環血液量が増加し、高血圧、多尿、羊水過多を合併し、次第に心不全が進んでいきます。

供血児となった胎児は、循環血液量が減少し、低血圧、腎不全、乏尿、羊水過少となり、循環虚脱(循環血液量が極めて減少した状態)となります。

無治療で放置した場合、受血児の羊水過多が進むことで、子宮が大きくなり陣痛が引き起こされて流産や早産に至ります。文献的には無治療での児の死亡率は80%以上と言われています。

双胎間輸血症候群の治療について

羊水穿刺・除去

受血児に合併する羊水過多症による陣痛発来を予防する目的で、以前は羊水穿刺・除去が行われていました。定期的に子宮内に貯まった羊水を吸引することで子宮を小さくすることが目的になります。この治療を行っても約半数の胎児が流早産による死亡や中枢神経障害を合併すると報告されています。

胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(内視鏡的胎盤吻合血管レーザー焼灼術)

本治療は、1990年代初頭に欧米を中心に開始されました。我が国には2002年に導入され、現在年間150−180例の治療実績となっています。

子宮内に細い内視鏡を挿入し、胎盤に存在する吻合血管をレーザー光線で焼灼・凝固する治療法です。この治療が可能な医療機関は全国で10施設です。
胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術

当院における実績

東邦大学医療センター大森病院では、2015年11月に当院倫理委員会の承認の下で胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術を施行しています。この治療法は健康保険が適用されます。

当院の中田はこれまでに胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術に対して300症例以上の治療経験を有しています。現時点での治療成績は、少なくとも一人以上の赤ちゃんの生存率が約94%程度、二人の赤ちゃんの生存率が約75%程度となっています。生存している赤ちゃんの後遺症の合併率は約5%です。

手術を含め治療に関わる入院期間は約2週間程度ですが、状況によって異なります。詳細は受診時にお尋ねください。