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血液透析(HD)を知る

血液透析(HD)のしくみ

腕の動脈と静脈をつなぎ合わせ太くなった血管、「内シャント」に針を刺し、ポンプをつかって血液をからだの外に取り出します。取り出された血液は「ダイアライザー」と呼ばれる透析器に運ばれ、尿毒素を除去し、ミネラルを調節し、余剰な水分を取り除いたあと、からだに戻されます。
血液透析(HD)のしくみ

ダイアライザー

「ダイアライザー」とは小さな穴が無数に開いた、細いストロー状の膜を約1万本束ねたもので、この穴は血球成分や蛋白質は通過せず、それよりも小さなものだけが通過するようになっており、「糸球体」と同じようにフィルターの役割をします。その内側に血液が送り込まれ、外側に透析液を流すことで、老廃物や塩分、ミネラル、水分が移動します。ここを通過して不要なものが除去された血液は回路を介してからだに戻されます。
ダイアライザー

HD週3回4時間ということ

血液透析は通常1回4~5時間行われ、月に15回まで保険が適用され、一般に週3回のペースで行われます。それだけ透析のために通院しなければならず、1回に4~5時間拘束されるので「たいへんだな」と思うひとも多くおられると思います。しかし、それでも週に12時間しか血液を浄化していない計算になり、腎臓の働きの10~15%程度しか代行していません。短いことはあっても、長すぎることはないのです。
HD週3回4時間ということ
週24×7=168時間の老廃物の蓄積を12時間で是正する必要があり、安定した透析を行うためには「透析と透析の間の生活」が安定している必要があります。

水分は少なく、少なく

透析は透析と透析の間に溜め込まれた老廃物や余剰の水分を短い時間で是正する治療なので、どうしても血液を浄化していない時間ができます。食べ過ぎたり、飲みすぎたりすると、そのぶん変動が大きくなり、心臓やほかの臓器に負担をかけることになります。
水分は少なく、少なく
尿が出なくなれば、水分を摂った分だけ、心臓は水風船が膨らむように大きくなります。透析で水分を除去するといったん小さくなりますが、また水分をとると心臓はまた大きくなります。心臓は伸びたり、縮んだりを繰り返して、やがて伸びきった水風船のようになってしまいます。それはだんだんと心臓の働きを弱くしていきます。塩分と水分の管理をしっかりして安定した透析ができるようにしましょう。
塩分と水分の管理をしっかりしましょう

ドライウエイト(DW)

「ドライウエイト」とは透析時に設定される体重のことをさします。本来、体重は水分、蛋白質、脂肪、無機質(ミネラル・骨)で構成されていて、通常、筋肉や脂肪が増えると体重が増えます。しかし、尿が出ない場合、余剰の水分が排泄されないので、水分が1L増えれば、体重が1kg増加します。「体重増加は全てが水分なのか。」といわれれば、そんなことはないでしょう。しかし、短期的な体重の変動は水分の変動として考えられています。
ドライウエイトは皮膚の乾燥、むくみ、血圧、透析後の疲労感、胸部レントゲンなどで多角的に評価して、「適正な体液量に近いときの体重」を設定します。このドライウエイトは状態にあわせて修正するもので、生涯体重ではありません。
ドライウエイト(DW)

血圧コントロール

透析が開始されるとそれまで血圧は130/80mmHg未満と説明されてきたのに、高くてもしかたがないと説明されることがあります。間歇的にからだから水分を除去するために程度の差はあれ、透析中に血圧は変動します。血圧が下がるとあくび、吐き気、嘔吐、頭痛、動悸、冷汗などの症状がでたり、時に失神などを起こすことがあります。しかたがないので血圧の目標値を緩めていきます。
透析中に血圧は変動します
体重増加を少なくして、安定した透析を担保したり、ドライウイエトを調節することで、普段の血圧コントロールもしやすくなります。高血圧の基準が140/90mmHg以上なのですから、できればそこに近づきたいものです。
一方、「以前は血圧が高かったのに今は血圧がいいんだよね。」というひとがいます。透析や自己管理や降圧薬がうまくいって血圧が落ち着いていればいいのですが、そういうひとの中に心機能が低下して血圧があがらないひとがいます。そのような場合は心臓をきちんと調べてもらいましょう。
心臓をきちんと調べてもらいましょう

リン(P)コントロール

「リン」と呼ばれるミネラルがあります。最近では歯の再石灰化を促すガムに「リン酸カルシウム配合」などと書かれていて歯を丈夫にするといわれています。透析が必要になるほどに腎不全が進行すると血液中のリン濃度が上昇します。歯であればいいのですが、血液中のリン濃度が高いと血液中にリン酸カルシウムができて血管石灰化や心臓の弁に石灰化が起きたり、関節腔に異所性石灰化が起きたりします。
リン(P)コントロール
リンは蛋白質を中心に多くの食品に含まれています。蛋白質を控えるとともにリン吸着薬をしっかり下がるように服用していただく必要があります。血清リン値の目標は6.0mg/dL未満です。
蛋白質を控えるとともにリン吸着薬を服用する

血液透析の利点

  • わが国の血液透析患者さんたちは世界第一位の生存率を誇ります。
  • 病院で管理された状況下で、透析医療が受けられます。
  • 患者さん自身は食事管理を含む自己管理を行う必要はありますが、透析医療そのものに携わる必要はあまりありません。
血液透析の利点

血液透析(HD)特有の合併症

  1. 不均衡症候群
    透析導入期にみられやすい合併症です。症状は透析中から透析終了後12時間以内に起こる頭痛、吐き気、嘔吐などであり、「不均衡症候群」と呼ばれています。透析により血液中の尿毒素は取り除かれますが、尿毒素が除かれにくい脳との間に濃度差が生じるために起こると考えられています。透析に慣れてくると起こりにくくなってきます。

  2. 血圧低下
    血液を介して、間歇的にからだから尿毒素や水分を除去するために程度の差はあれ、透析中に血圧は変動します。血圧が下がるとあくび、吐き気、嘔吐、頭痛、動悸、冷汗などの症状がでたり、時に失神などを起こすことがあります。高齢、糖尿病、低栄養、貧血、心機能の低下、体液管理が不十分である場合、血圧低下が起きやすくなります。

  3. 筋痙攣
    透析中に足がつったり、筋肉がこわばったりすることがあります。透析導入期や水分の除去量が多い場合に生じやすく、不均衡症候群や血圧低下と同じような原因で起こると考えられています。

  4. 不整脈
    透析中に脈が乱れたり、動悸などの症状がでることがあります。心臓疾患の合併や水分の除去量が多い場合やミネラルの急激な変化で起きやすくなります。

  5. シャント関連合併症
    シャントは繰り返し使用する中で、血管にこぶ(シャント静脈瘤)ができたり、狭くなったり(シャント狭窄)、腕がはれたり(シャント静脈高血圧症)、感染を起こすことがあります。また、せっかく作ったシャントですが、血管が閉塞してしまう場合があります。状況によっては治療や再手術の必要がでてきます。

お問い合わせ先

東邦大学医療センター
大森病院 腎センター


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TEL:03-3762-4151(代表)

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