「そろそろ透析が必要ですね」と言われたら
腎臓がその役割を終えるとき
腎臓の働きがとうとう10%以下にまで低下すると、自分の腎臓では自分のからだを浄化しきれなくなり、老廃物が蓄積して倦怠感、食欲低下、悪心、嘔吐、頭痛などの尿毒症状が出現したり、体液のバランスがとれなくなり、心不全や肺水腫を起こし、息切れや呼吸苦が出現しやすくなります。放っておけば命にかかわってしまいます。不本意だとは思いますが、命をつないでいくために、ご自身の腎臓をあきらめて、代わりに透析療法で血液を浄化する必要がでてきます。

透析を行えばある程度までは普通に生活することが可能になります。しかし透析療法そのものに腎臓をよくする作用はなく、腎臓の働きを完全に補うものでもありません。したがって生涯続けていく必要があり、続けていくことでいくつかの合併症が生じてきます。
透析療法を開始する時期
保存的な治療で改善できない慢性腎機能障害、臨床症状、日常生活の障害を認め、以下のI~III項目の合計点数が原則として60点以上になったときに透析療法の導入適応になります。
I 臨床症状
以下のうち3箇以上あるものを高度、2箇を中等度、1箇を軽度とする。
II 腎機能
年少者(10歳以下)、高齢者(65歳以上)、全身性血管合併症のあるものについては10点を加算する。また小児においては血清クレアチニン値を用いないでクレアチニンクリアランスを用いる。
III 日常生活障害度
腎臓代行医療の選択
自分の腎臓のかわりに血液を浄化する方法に血液を透析器を介してきれいにして戻す「血液透析」と、おなかにカテーテルという管を入れて、透析液を出し入れする「腹膜透析」と腎臓の提供を受ける「腎移植」があります。
これらのうち、医学的条件だけでなく、ライフスタイルや年齢、性格なども考慮して、最も自分にあった治療法を選択していただきます。
これらのうち、医学的条件だけでなく、ライフスタイルや年齢、性格なども考慮して、最も自分にあった治療法を選択していただきます。

透析を忌避するこころ
適切なタイミングで透析療法に移行することはとても大切なことです。あなたが自分の腎臓をあきらめなければいけない現実、透析をしていくことで、いままでおこなってきた生活の一部をあきらめなければいけない現実は、あなたをつらい気持ちにさせているのでしょう。わたしたちはあなたの気持ちを少ししか汲んであげていないのかもしれません。しかし、わたしたちは透析の生活を受け入れることができず、様々な状態(否認・逃避・拒絶・抵抗・うつ)でそこに留まってしまうひとたちを診てきました。逆に透析を受け入れて生活しているひともたくさん診てきました。少しでもお力になれるといいと思っています。

透析のまえの人生も大切ですが、透析のあとの人生だって大切です
透析が必要なときに透析を先延ばしにしていると心臓に負担がかかったり、透析導入期に体力を消耗したり、入院期間が長くなったりとあまりいいことはありません。また透析をしないで、あまり心臓に負担をかけておくと、透析のあとの生活にも影響します。「透析にならないこと」が人生の大半を占めていると、透析のあとの人生に目が向かないものです。透析にならない努力は必要ですが、透析のあとの人生だって大切です。無理は禁物です。

透析の準備
- まずは透析療法を受け入れる必要があります。そのためには「血液透析」や「腹膜透析」の仕組みをおおまかに理解する必要があります。
- 血液透析を行うためにはたくさんの血液を透析器に運んであげる必要があります。そのために血液流量の多い太い血管が必要になります。そこで腕の動脈と静脈を手術でつなぎ合わせ、血管を太くします。これを「内シャント」といいます。内シャントは十分発達してから使用することが望ましく、透析が必要になる前に十分余裕をもって計画的に行う必要があります。
- 腹膜透析を行うためには透析液を出し入れするカテーテルという管を手術をして留置する必要があります。腹膜透析から始めるのであれば、十分体力がある間に準備をしたほうがよいでしょう。
- 食事療法は腎臓を守るための食事から透析を受けながら健康でいられるための食事療法に変更されます。基本的な方向性は変わりませんが、透析が不得手な部分を自己管理でおぎなっていく必要があります。
- 「透析が必要な慢性腎不全」は社会福祉サービスを受けることができます。その仕組みを理解する必要があるでしょう。
