腎臓病を知る

蛋白尿がでるということ

蛋白質はからだにとって大事なものです。通常はほとんど腎臓からろ過されず、排泄された場合でも40~80mg程度です。ところが「糸球体」と呼ばれる茶漉しやドリップコーヒーのフィルターみたいなろ過器が、なんらかの原因で痛んでくると湯のみにお茶葉がこぼれるように尿に蛋白がでてきます。これを「蛋白尿」といいます。つまり蛋白尿は糸球体の障害を示唆する大事な所見です。蛋白尿がでるひとが必ず将来透析療法を受けることになるとは限りませんが、現在透析を受けている多くのひとの最初の所見が蛋白尿であることを忘れてはなりません。
蛋白尿がでるということ
ただし、健康でも蛋白尿がでることもあります。たとえば激しい運動をした後や高熱が出たときに一時的にでることがありますし、ひとによっては体位を変動させただけででてしまうことがあります。

血尿がでるということ

尿に血液がまじっていると、尿の色が濃くなります。これを「血尿」といいます。これは尿の通り道で出血が起こっているということです。目でみて、鮮やかな赤い色をしていてわかる場合はもちろん、コーラ色に見えたり、見た目には全く正常なのに検査をすると潜血反応が陽性になる場合があります。通常、膀胱や尿道からの出血ですと、尿は鮮やかな赤い色になります。糸球体からこぼれ落ちてくる場合はコーラ色に見えたり、見た目には全く正常なことがあります。
血尿は大きな異常がなくてもでる場合もありますし、大きな病気が隠れていることもあります。血尿がみられる場合は一度きちんと調べてみる必要があります。


腎臓で火事(炎症)が起きる

糸球体の障害は様々な病気で起こることがあります。火事の原因が放火なのかタバコなのかコンロなのか火元はいろいろあるということに似ています。糸球体で起こる火事の原因によって蛋白尿が多いタイプ、急激に腎臓の働きが低下してしまうタイプ、数十年かけてゆっくり腎臓の働きが低下するタイプ、薬が効きやすいタイプ、効きにくいタイプなどいろいろ分かれます。適切な治療を行うには火元をきちんと調査して対策をたてる必要があります。

腎生検という検査

現場調査を行うためには腎臓の組織を一部採取して顕微鏡でみてみる必要があります。「腎生検」という検査法です。当施設の腎生検は超音波(エコー)で腎臓をみながら、背中側から細い針を刺入させ、腎臓の組織小片を採取する方法で行っています。腎臓からの出血や血尿などの合併症があることがあり、出血を最小限に抑えるために入院や検査後の安静の保持が必要になります。
腎生検という検査

焼け野原になる前に火事(炎症)を消す

火元があきらかになれば消火活動を行うことができます。「ステロイド療法」や「免疫抑制剤療法」という薬がこれに相当します。うまく消火できれば焼け野原は最小限に食い止めることができます。しかしすでに焼け野原が広がった状況では「ステロイド療法」や「免疫抑制剤療法」も効果を発揮しません。
焼け野原になる前に火事(炎症)を消す

火事を消すタイミング

難しいのは程度の軽い火事であれば無理に治療を行う必要はなく、焼け野原が広がり、腎臓の働きが低下してしまっているとすでに治療をしても仕方がないと判断されることで、いくつかの治療ガイドラインは示されているものの、そこからこぼれるひとが多く存在しているのです。わが国に腎臓病のひとが1900万人もいるといわれているのにわずかばかりのひとだけが腎生検をして、わずかばかりのひとだけにしか「ステロイド療法」や「免疫抑制剤療法」は行われていないのです。
火事を消すタイミング
病気の勢い(病勢)の強いひとはわたしたちのところを訪れてくれますが、検診で尿検査異常を指摘されただけのひともきちんと調べてみる必要があります。腎臓の働きが低下して自覚症状がでてからではなかなか腎臓を助けてあげることが難しくなるのです。