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頚動脈狭窄症について

病態について

首を通って脳へ血液を送る血管には、通常、頚動脈と椎骨動脈が左右1本ずつあります。このうち、太いほうである頚動脈の内腔が狭くなる(狭窄といいます)状態を指します。狭窄は進行すると血液の流れを妨げたり、狭窄部で血流が乱れることでできた血の塊(血栓)が頭の中の細い血管に詰まったりすることで様々な症状を生じることがあります。症状は障害の程度によって様々で、一時的な場合(一過性脳虚血発作)と永久的な場合(脳梗塞)があります。脳梗塞を来すと、その部位に応じた神経症状(運動麻痺、知覚麻痺、言語障害、視機能障害など)を呈し、重症の場合には、寝たきりや植物状態、さらには生命の危険を生じることもあります。

頚動脈狭窄症の治療法について

治療の目的は狭窄によって引き起こされる脳梗塞を予防することです。方法としては、主に以下の3種類があります。

内科的薬物治療

内科的治療としては、高血圧、高脂血症、糖尿病などの動脈硬化増強因子のコントロールとともに、狭窄部に起こる血栓症を防ぐための薬物治療を行います。しかし、欧米で行われた大規模臨床試験では、狭窄率が60%以上の場合には、外科的な血行再建術を行う方が脳梗塞の予防効果が高いことが立証されています。また、現在の内科的治療法で狭窄が自然に改善することはほとんどなく、狭窄が進行すると手術の難易度も増加します。

直達手術

直達切開手術は全身麻酔下に狭窄部の前後の血管を一時遮断して血管を切開し、狭窄の原因となっている動脈硬化斑(コレステロールや脂肪の塊)を除去する内膜剥離術が一般的です。病変を取り除くという点で最も確実で治療効果も立証されている手術です。しかしこの治療法は全身麻酔が必要であるため、心疾患や呼吸器疾患、重症糖尿病などの内科的合併症をもつ患者さんには手術・麻酔の危険性が増加します。また、病変部の形や位置などによっては手術の難易度が高くなります。

血管内治療によるステント留置術

血管内治療は狭窄部にステントとよばれる金属を留置し、狭窄部を拡げて血流を確保する方法です。局所麻酔下に施行可能であり、疾患を併せ持つ患者さんにおいて、周術期の合併症が直達手術より少ないことが証明されています。手術効果、合併症も直達手術に劣っていないこともわかっています。しかし、血管内治療については臨床応用されてから日が浅いため、長期的な治療効果については検討が充分されていません。

いずれの治療も、長所・短所がありますが、年齢、全身状態、狭窄の部位・程度・形態などを総合的に検討した結果で、より望ましい治療法が判断されます。
頚動脈狭窄症の治療前後

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大森病院 脳神経外科

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