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留学体験記

岡島 行伸 先生(留学先:オーストラリア フリンダース大学)

(オーストラリア、アデレードにあるフリンダース大学/Innovative eye care)
 私は2018年10月から2020年3月までオーストラリア、アデレードにあるフリンダース大学のTony Phillips先生と開業医であるInnovative eye careのLachlan Hoy先生のもとに留学し、特殊コンタクトレンズについて学んできました。みなさんオーストラリアのイメージはどんなものでしょうか。コアラ、カンガルーなどの動物と広大な自然豊かなイメージ、もしくはグレートバリアリーフなどのきれいな海のイメージでしょうか。日本からも多くの観光客が訪れる人気の国ではないでしょうか。公用語は英語で住民の80%以上がヨーロッパ系の白人であり、その他にアジア人、現地のアボリジニです。人口は約2500万人(日本の約1/4)、国土は日本の約20倍、広大な土地と少ない人口で、人口密度は1Km2あたり3人(日本の約1/115)です。私が滞在したアデレードを知っている方、訪れた方は少ないと思いますのが人口は約137万人で日本の姫路と姉妹都市です。

 現地オーストラリア人はとても優しく、フレンドリーでまた夜中でも街中を歩けるとても治安はよい場所です。日本と同様に四季があり、冬は寒すぎず(いままでに雪は1日しか降ったことがないらしいです)、夏は40度越えに日もありますが、夜になると涼しくクーラーがいらないのでとても過ごしやすい気候です。またアデレードは海と山にかこまれております。とくに赤ワインはオーストラリアワインの中でも1、2を争うほど有名で、数多くのワイナリーが存在して週末になると赤ワインで乾杯、海ではビーチでのんびり、蟹釣りと休日も楽しむことができます。

 今回の留学では、大学と開業のオプトメトリストのところで特殊コンタクトレンズを学びました。日本では視能訓練士さんにあたるオプトメトリストは視覚機能のスペシャリストとしてメガネやコンタクトレンズの処方、白内障や緑内障、黄斑変性などの眼病の検診・診断・投薬ならびに視覚機能の改善、リハビリテーションなどをおこなってます。日本とは違いコンタクトレンズ処方はオプトメトリストでありオーストラリア眼科医はほとんど関与しません。オーストラリア眼科医からオプトメトリストにコンタクトレンズ処方紹介します。逆にオプトメトリストは手術等が必要な人を眼科医に紹介します。

 オーストラリア眼科医は一般診療というより手術がメインです。オーストラリアの国民性かもしれませんが、サングラスをかけるためか眼鏡よりコンタクトレンズ装用を好み、先天白内障術後の子供から90歳のお年寄りまで幅広くコンタクトレンズ装用しています。コンタクトレンズはソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズの多くはRidge Gas Permeable :RGPと区別されます。実際コンタクトレンズ処方についてですが、ソフトコンタクトレンズではDaily Disposable Toric Astigmatismは10度きざみであり種類も豊富、Multifocalレンズも頻繁に処方されています。RGPレンズは直径、ベースカーブ、パワーをオプトメトリストがカスタムメードで患者ごとに作成します。いままで我々が既知のRGPレンズは直径の小さいものですが、直径も様々です。皆さんはスクレラル(強膜)レンズって聞いたことがありますか?恥ずかしながら自分も留学前に初めて聞きました。スクレラルレンズは角膜より直径の大きなRGPレンズで角膜に直接接しなく、強膜で支持させているため異物感ほとんどなく、これまでコンタクトレンズがはずれやすい、痛くて装用できないコンタクトレンズ不耐性の患者さんや、進行した円錐角膜の患者さんにとても有用であり、患者さんの満足感が高く、とても興味深く非常に示唆に富んでいました。現地のクリニックではコンタクトレンズ処方の仕方はもちろんのこと、コンタクトレンズ装用指導やケア指導にも携わることができたのもいい経験となりました。

 また日本に比べて予防医学がすすんでいる諸外国では近視抑制オルソケラトロジーレンズについても関心が高く、留学先のInnovative Eye Careではトポグラフィーのデーターからソフトウエアに入力して患者さんにあった直径、ベースカーブ、パワーをカスタムメードでレンズを作成し使用しておりフィッティングがとてもよく、視力もとても安定していたことに驚嘆しました。昔のオルソケラトロジートライアルレンズにはホコリがかぶっていて先生が「トライアルレンズ使っていたのは10年前だね」といった言葉はいまでも鮮明も覚えています。
 今回の留学中にオーストラリアではInternational Cornea & Contact Lens Congress:ICCLC、アメリカのGlobal Specialty Lens Symposium: GSLSにも参加させていただきました。両学会とも特殊レンズのスクレラルレンズと近視抑制オルソケラトロジーのセッションがほとんどでした。いまこれらのコンタクトレンズが世界トレンドなんだと実感でき、オーストラリアでこのような特殊レンズに触れていたこと、講演内容が理解できとことはとても有意義でした。

 日本の便利すぎる生活に慣れてしますと海外生活では不便なことが多いです。欲張っていろいろなことをやることは厳しいです。なにをするにもその国でのあるあるをインターネットで検索して、忘れ物がないか何回も確認して、一日一つのことをコンプリートしたらよしとおもうように考えを変えることでイライラもなくなりなり、許容できるようになると思います。郷に入っては郷に従えです。

 今回の留学により日本では馴染みない世界の素晴らしい技術や機器に出会えたこと、逆に日本のすばらしさを再認識させるいい経験となりました。英語で質問するのは大変ですが日常会話レベルなら現地にいくとなんとかなります。英語ができないからといって留学のチャンスを逃さないでください。今年はコロナ感染症で多くの方々が留学のチャンスを逃したと聞きますが来年、再来年にもチャンスが来たら是非留学にトライしてみてください。人生の良い経験になるとおもいます。ただ先進国は日本にくらべて物価が高いのでお金を貯めてからいくのをおすすめします(笑)。

 最後に堀裕一教授に今回の留学にたいして多大なるご支援、ご尽力を賜り、心より感謝とお礼を申し上げます。
写真1注釈:Tony先生と筆者 写真1注釈:Tony先生と筆者
写真2注釈:Lochlan先生と筆者 写真2注釈:Lochlan先生と筆者
写真3注釈:アデレード市街 写真3注釈:アデレード市街

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