第65回日本東洋医学会学術総会市民講座
2014年05月30日漢方講演 漢方名称物語への誘い
もし漢方薬の名前がカタカナだったら-漢字表記だからわかるその働き-
アセトアミノフェン。薬の名前です。これ当然読めますね。車の名前だってカタカナだし、なんか効果ありそう。では、意味わかりますか?
リッコウサン。漢方薬の名前です。読めるけど、西洋薬の名前と同様、意味不明。でも漢字で立効散と書くと、少しわかる気がしませんか。効の字から、効果がある薬なのだと。
立の意味はわからない?いやいや実は理解可能なのです。立とは立春、立夏の立です。立春とは2月初旬で、これら春が始まる時期、すぐに春になる時期。つまり立とは、すぐに、という意味なのです。立効散とは、すぐに効果がでる粉の漢方薬(散剤)という訳です。主に歯痛や口内炎に使用されます。歯痛ほど、すぐに治ってほしい痛みもありませんしね。麻雀のリーチは立直と書きますが、これはもうすぐ上がるよという宣言となります。
アセトアミノフェンとは、感冒や歯痛、疼痛などに使用される解熱鎮痛薬です。西洋の立効散と言うわけです。
真武湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、五淋散、平胃散。このように漢方薬の名前は、漢字だらけで、非常に取っつき難く感じられます。でも漢字だからこそ、西洋薬に比べ、理解する事ができるのです。漢字の名前には、漢方薬理解の秘密が隠されているとも言えます。今回の講演では、その秘密を皆さんに楽しくそっと教えます。講演を聴けば、漢方薬がきっと身近なものと感じられるでしょう。
そこで講演に先立ち、まず予備知識を。漢方薬の名前の代表的な付け方には、次のようなものがあります。
- 重要な働きをする生薬による命名…葛根湯は葛根が重要な働きをします。
- 方剤の働きよる命名…先の立効散がそうですが、他に大腸を潤し便秘を改善する潤腸湯などがあります。その他、啓脾湯、平胃散、温清飲、加味逍遙散など。
- 方剤が適応される病気の状態…打撲の改善に仕様される治打撲一方などがあります。その他、四逆散、五淋散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯など。
- 中国思想による命名…小青竜湯は、東方と春の神様である青竜から付けられました。その他、六君子湯、真武湯、白虎加人参湯、女神散など。
- 構成生薬の数による命名…八味丸は、八つの生薬から構成される所からの命名です。その他、六味丸、五苓散、四物湯など。
最後に、最も絶妙で気の利いた漢方薬の名前をあげましょう。それは帰脾湯(きひとう)という薬です。その由来は講演でお話ししますが、ヒントを書いておきます。皆さんで考えてみて下さい。
(1.)帰は当帰という漢方薬。(2.)帰には、帰着する、責任の所在などの意味がある。(3.)脾とは胃腸の意味。
では6月29日日曜日の午後1時に、有楽町東京国際フォーラムでお会いいたしましょう。
漢方講談 漢方復興物語への誘い
もし漢方医学が滅んでいたら-滅亡から救った医師、和田啓十郎とは?-
1000年以上前から、日本人の健康に貢献してきた漢方医学。実は一度滅びかけた事があったのです。
明治時代初期、時の政府は、西洋医学を日本の医学とする方針を固めました。医師は西洋医学を学んだ者だけとしたのです。世は文明開化の時代、古いものは見捨てられた時代でした。こうして漢方医学を学ぶ人は、ほとんどいなくなり、滅亡寸前までになったのです。
医学とは人を治すものだ。西洋とは、風俗生活習慣が異なる日本人に、ふさわしい医学があるはずだ。いやかってあったのだ。漢方医学の復興普及こそ、今の日本には必要なのだ。この切なる思いから、明治時代末期、漢方復興ののろしを上げた医師がいました。和田啓十郞先生です。先生は『医界の鉄槌』を出版し、これを契機として漢方医学は徐々に普及し始めたのです。
もし和田先生がいなかったら、漢方医学は今日、滅んでいたかもしれません。滅んでいたら……。病気の治療手段が、確実に少なくなっていたはずです。
では一体なぜ、先生はのろしを上げたのでしょうか?そこには、壮絶な経験と思い入れがありました。では『医界の鉄槌』は、医師達から歓迎されたのでしょうか?和田先生は世の常を、しみじみと知る事となるのです。
和田先生は、野口英世と同じ済生学舎(今の日本医科大学)に学びました。漢方の滅亡から救った和田先生。もっと知られても良い医師といえます。
今回の市民講座では、ベテラン講談師神田香織師匠が、和田先生一代記を語ります。和田先生の思いと情熱が私たちの胸を打ち、その時代に生きていたが故の悲しみと切なさが、私達の「こころ」に響くでしょう。本講談は、他では聞くことのできない、神田師匠の創作講談です。
日時 | 平成26年6月29日(日) 開場:午後1時 |
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場所 | 有楽町東京国際フォーラム ホールC |
会費 | 入場無料 |
申し込み・問合せ | 株式会社コンベンションリンケージ ①http://www.c-linkage.co.jp/65toyo/ ② Fax.03-3263-8693 Tel.03-3263-8688 ③ E-mail : 65toyo@c-linkage.co.jp |

投稿者:三浦於菟
カテゴリー:東洋医学の話