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経済学者の勉強術: いかに読み、いかに書くか

 

東邦大学医学部
東洋医学研究室
田中耕一郎

経済学者の勉強術: いかに読み、いかに書くか
根井 雅弘 人文書院,2019
この本の魅力は、深く学ぶこと、学問とは何かいう点を、随所に力強く語っていることにあると思う。
「私は、単なる「知識」と「教養」は分けて考えた方がよいこと、そして「教養」とは知識の寄せ集めではなく、長年、幅広い読書やゆとりのある思索からある種の「化学反応」を経て生まれてくる何者かであることを指摘したかった。」
「『これ一冊で』わかる・・・」と銘打った「教養本」がベストセラーになることがあるが、一冊で教養が身につくようなこと本はどこにもない。ちゃんとした学問をした人ならそれが分かるはずだ。」
 東洋医学の世界でも明日から使える処方のような豆知識が氾濫している。しかし、東洋医学の専門家は、東洋医学の分野はもちろん、他の領域を含め、限りなく開拓し続け、やはり根井雅弘氏のいう「教養」がにじみ出るところまでいきたいと考えている。
 次に興味深いのは、学問の思想史のようなものだ。今生きる時代性に私たちは影響を受けている。それが学問にも色濃く反映する。特に科学技術の分野は、現在の最新のものをアップデートすればよく、従来の経緯を知らなくてもよい場合もある。医学においても最先端が最重要という考え方である。一方で、根井雅弘氏は、「特定の『政策』や『政治的立場』と結びつくと、経済学者がときの批判精神を失い、学問が政治の道具に堕してしまう可能性が大いにある。」とし、幅広い教養を有することが必要で、その中には経済史が含まれる。  東洋医学も同様で、各時代で創られ有用であった処方が現在残っている。そのため、処方集は様々な時代の背景があって生まれた処方が重層的に掲載されている。そのため、東洋医学史を学ぶことで、それぞれの処方がつくられた時代の状況、思考過程を学ぶことが出来る。東洋医学の「教養」を深めるにはなくてはならない分野である。
 また、原書を読めるようにと根井雅弘氏は複数の言語に通じているが、東洋医学ではやはり中国語は、漢字の語感を深め、読み込みを深めるためになくてはならない「教養」である。