東洋医学科 医局News

東洋医学科の研修を終えて

初期研修医2年次 鄭 有人

東邦大学が掲げる「より良き臨床医」を目指すには、患者に寄り添った全人的な医療が求められる。特に総合診療内科部門において、様々な症状を持った患者がいて、それぞれにあった治療を行う必要がある。保険診療上、限られた医療資源内でいかに個々に合った治療が行えるかが鍵となる。その性格上オーダーメイド的な漢方治療を補助的に使用するのは効果的であると思われる。超高齢化社会と複雑化しつつある日本の医療において、東洋医学も当然学んでおくべきだと考え、自分は夏と春先に2回に分けて研修を行った。
2回に分けた理由は、季節による処方の違いについて学ぶことと、漢方治療は時間がかかることが多く、初診からの経過を長時間的に追うためであった。
当科の研修医の仕事は初診番(アナムネ聴取、簡単な診察、鑑別処方など)と各診察医の陪席、
鍼灸師業務の見学・体験、地域医療を担う診療所で漢方診療を行っている東方医院の見学、時期によってはツムラなどのメーカー工場見学、勉強会・講演会や学会への見学参加を行う。
研修前半には虚実、表裏、寒熱、五行論(五味、五臓六腑など)、三焦など本邦の伝統医学の大本の一つとなっている中医学の用語や基礎理論について学んだ。
陪席においては、内科・小児科・眼科・産婦人科・心療内科・循環器内科・皮膚科・精神科など様々なサブスペシャリティを持った各医師の診療のテクニックやコツなどを学んだ。外来間・後にミニレクチャーがあり、病態解釈、方剤解説、西洋医学との組み合わせ方などについて学ぶことが出来た。
研修終盤では自分で初診を診た症例の発表を行った。

大学病院では様々な最先端技術を駆使した検査が行える。まず西洋医学的に緊急疾患・重篤疾患を否定した上で、東洋医学科の受診が望まれる。西洋医学では画像診断が発達しているが、これは形態学を得意とする。患者さんの症状の中には形態学的には異常ないが、機能学的な問題がある場合も多い。東洋医学では生活習慣や外的・内的環境因子が強く反映され、機能的・時間的に診察・治療する。
例えば検査で問題のない、冷え性、頭痛・腰痛などの疼痛、めまい、全身倦怠感、食欲不振、生理症状、下痢・便秘、肩こり、感冒初期などの治療には東洋医学の方が得意なことが多い。西洋薬は適応や効果が明快であるが、副作用の問題や長期間使用出来ない場合がある。このような患者さんに東洋医学を併用・代替してみる価値は十二分にある。

東洋医学の研修時期であるが、個人的には各診療科の専門医・学位を取得する前に研修する方がよいと思われる。
吸収力があり、各診療科に知的好奇心が旺盛で、視野が相対的に広いポリクリ病棟実習後の医学生や初期・後期研修医あたりの研修が最も効率的・効果的と思われる。

東洋医学科は手術がなく、病棟患者の数も少ない。その分外来において、患者一人あたりに割く時間は比較的長い。これは病態把握に生活習慣が深く関わっていて、深い問診が必要なためである。
確かに外来は患者数が多く、時間内に診療を終えるには時間効率も考えなければならない。しかし、患者の話をよく聞き、時には生活のアドバイスを交えながら診察を行うと、患者から本当によく診てくれる先生だと感謝されることが多々ある。ラポールが形成されると、治療のアドヒアランスもよくなり治療効果も大いに上がる。かかりつけ医には必須の診療技術である。
自分が医者になって本当に良かったと思う瞬間は数多くあったが、循環器内科や心臓血管外科、救急救命科を研修でローテートした時に人命救助できた喜びはもちろん大変貴重な経験となったが、眼科で視力を失いそうな人を救済したときのような、患者さんのQOL向上に役に立ったときに感謝される瞬間ほど嬉しかったことはない。
東洋医学科でも患者に寄り添い、全人的医療を行うことができ、感謝される機会を多く経験できた。
今後西洋医学で限界や、かゆい所に手が届かない経験をしたら、研究、もしくは東洋医学にも携わるべきであると考えた。
東洋医学を極めるには、西洋医学と同じように長年の臨床経験や勉強が必要となる。これは数ヶ月単位ではなく数年から何十年単位の話となるが、まずはきっかけがないとどうしようもない。東洋医学を勉強しようにも、その場が分からず、方法も分からない。
その分、大学病院の東洋医学科の存在は大変大きい。
東洋医学科を持つ大学病院は少なく、今後、東洋医学をちゃんと学べる研修施設が増える事を切に願う。
最後に、研修に尽力して下さった医師や医療関係者の皆様に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
平成29年3月

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