医療チームの一員として実践する病理学

【お問い合わせ先】
東邦大学医療センター
大森病院 病理診断科
〒143-8541
東京都大田区大森西6-11-1
TEL:03-3762-4151(内線3451)
【休診日】
第3土曜日、日曜日、祝日
年末年始(12月29日から1月3日)
創立記念日(6月10日)
「深在性真菌症の病理診断」の特色
1.病理診断科として深在性真菌症の研究を行う国内唯一の施設です
“真菌症”と聞くと、まず水虫やたむしなどを思い浮かべる方が多いかもしれません。確かに水虫やたむしは真菌症のひとつですが、分類としては下記の3つの種類があります。
表在性真菌症 | 真菌による感染が皮膚表面に留まる症状(水虫やたむしなど) |
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深在性皮膚真菌症 | 真菌による感染が皮下組織や爪などに及ぶ症状 |
深在性真菌症 | 真菌による感染が内臓など体内の臓器にまで及ぶ症状 |
当科では、このうち「深在性真菌症」の病態、疫学、診断および治療に関する包括的な研究を推進しています。培養した菌を用いて同様の研究を行っている施設は他にもありますが、病理組織(生検)を用いた研究を行っているのは施設としては東邦大学医療センター大森病院が国内唯一であり、世界的にも貴重な施設のひとつとなっています。
2.命に関わることもある「深在性真菌症」の適切な治療を目指し、日々努力しています
日本における代表的な深在性真菌症として、以下の4つが挙げられます。
カンジダ症 | カンジダ属菌が起こす感染症。皮膚や口腔、性器などに発症する表在性のものから、致命的となる場合もある全身性のものまである。 |
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アスペルギルス症 | アスペルギルス属の真菌が起こす感染症で、主に肺に生じる。急速に進行する肺の侵襲性アスペルギルス症など、治療が遅れると命に関わる場合もある。 |
クリプトコックス症 | クリプトコックス・ネオフォルマンスという真菌が起こす感染症。主に脳と脊髄を覆う組織(髄膜)や肺などに生じる。ホジキンリンパ腫やサルコイドーシス、慢性白血病、がんなどの患者さんやHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者、強力なステロイドによる治療を行っている人などにみられる。 |
ムーコル症 | 接合菌による感染症の総称で、鼻や副鼻腔、眼、脳、肺、消化器系などに発症。とくに鼻、副鼻腔、眼、脳に生じる「鼻脳型ムーコル症」は症状が重く、命に関わる場合もある。 |
これらの深在性真菌症の治療は、抗真菌薬を用いた薬物療法が主体となります。ただし、抗真菌薬はすべての菌に対して万能なわけではありません。深在性真菌症の治療には、次のような問題があります。
- 薬が有効な菌と、そうではない菌がある
- 見た目で種類を特定しやすい菌もあるが、特定が難しい菌もある
適切な治療を行うためにはこのふたつの問題をクリアし、正確な菌種の見極め、およびその菌種に対する有効な薬剤を処方することが必須となります。
とくに深在性真菌症に感染している患者さんは免疫機能が低下している場合が多く、重篤な症状を引き起こしやすい傾向があります。このような患者さんにも迅速に対応できるよう、当科では菌種の同定に重点を置いた診断に取り組み、治療を行う各診療科のサポートに努めています。3.国内の深在性真菌症の研究を牽引するリーダー的存在として幅広く活動しています
どの真菌がどういう病気を引き起こすのか、感染を防ぐためにはどうすればよいのか。深在性真菌症の予防や有効な治療方法につなげるため、最近は下記の研究にとくに力を入れています。
- 約20年間分の標本を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いてDNAを増殖させ、中にいる真菌の種類を再検証
- 培養細胞や実験動物などのモデルを使って免疫のメカニズムを分子レベルで解明
- 手術で切除された検体のCT画像から宿主や身体の免疫反応を解析
なお、患者さんから直接のご依頼はお受けできませんが、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構委託事業「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進事業」の支援を受け、大学病院や研究施設、一般病院に所属する医師や研究者を対象とする「真菌症病理診断システム」を開設し、日常の病理診断業務において診断困難な侵襲性真菌症についてのコンサルテーション・サービスを行っています。
病理診断科の特色
- 「深在性真菌症の病理診断」の特色
- 「がんの病理診断」の特色