根本隆洋教授 日本精神保健・予防学会理事長就任
東邦大学医学部 精神神経医学講座・社会実装精神医学講座
教授 根本隆洋
2024 年 4 月に,鈴木道雄先生の後任として日本精神保健・予防学会理事長に就任いたしました。 はなはだ微力ではございますが,任務に全力を尽くして参りますので,今後も変わらぬご指導ご鞭撻 を賜りますよう,宜しくお願い申し上げます。
精神医学領域における早期介入は,1980年代の精神症群を対象とした取り組みに始まり,1998年 に国際早期精神症学会(International Early Psychosis Association:IEPA)が設立され,世界的に早期 介入を牽引してきました。我が国においては,日本精神障害予防研究会を経て,2008年12月に日 本精神保健・予防学会に改組され今に至ります。
ところで,前述のIEPAの語は,それが略さずに綴られる(スペルアウト)ことは現在ありません。 学会のホームページにも,IEPAはIEPAとしか書かれていません。2023年7月にスイス・ローザン ヌで開催された第14回国際学術総会(IEPA 14)において,IEPA PresidentであるAlison Yung教授 と話した際に,IEPAのEとPは,今はEarly interventionとPreventionと考えるのが適切だろうと仰っ ていました。もはやEarly Psychosisではないわけです。
初回エピソード精神症(First-Episode Psychosis:FEP)を対象に始まった早期介入は,発症リスク 状態(At-Risk Mental State:ARMS)へと対象を広げ,そして精神症群に限らずより広く「精神疾患」 のリスク状態を表すClinical High At-Risk Mental State(CHARMS),さらには若者のメンタルヘルス (Youth Mental Health:YMH)へと,主眼を置く範囲は広がりつつあるのが,近年の早期介入の動向 といえます。こうした流れの中で,生物-心理-社会(Bio-Psycho-Social)の各側面からの,バラン スある包括的な議論と取り組みが今後も欠かせません。
一方で,早期介入が精神疾患の予防・回復やメンタルヘルスの維持に効果を認めることが,世界的 にも様々な研究で明らかにされてきたものの,我が国において,理解の高まりをみせながらも,臨床 や地域における実践は依然として広がりに乏しいのが現状といえます。研究成果が臨床現場で実践さ れずに解離が生じている「エビデンス・プラクティスギャップ」が,医学領域における重要な課題で あると近年認識されつつあります。こうした問題の解決に向けて,社会実装(social implementation)を主題とした,実装科学(implementation science)という新たな学問への期待 も高まっています。早期介入の社会実装に向けて,日本精神保健・予防学会が果たすべき役割は極め て大きく,本学会の存在意義の1つであると考えます。理事長としてその推進に尽力して参ります。
また,前述のIEPAのBoard memberを2022年から務めておりますが,2025年9月8日から10 日にかけて,ドイツ・ベルリンで第15回国際学術総会(IEPA 15)が開催されます。日本からも是非 多くの方々にご参加をいただければ大変ありがたく存じます。
日本精神保健・予防学会のさらなる発展のために精一杯励んで参りますので,皆様のご指導とご支 援の程,何卒宜しくお願い申し上げます。