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多文化間精神医学研究班

メガロポリス東京を歩いていて、一日に一回も肌の色の違う外国人と会わない日のほうが珍しい。旅行者、ビジネスマン、外交官、留学生、国際結婚、労働者、そして少ないが難民など彼らの背景は多種多様だ。では翻って私たち自身が外国に出たらどうだろう。きっとその時、言語、文化、習慣の差異、宗教、価値観、民族や人種との対立・融合にさらされ戸惑い、あるいは新しい感動とめぐりあえるかもしれない。異国人への想像力を少し膨らませれば、彼らのこころに引き起こされる問題とは、そう遠い話ではないと感じられるだろう。

彼らが日本に来ているからにはちょっとしたお手伝い、例えば精神科医であれば何かできるのだろうか。それは彼らのためだけではなく、ひるがえって日本自身を広がりのあるものに変える可能性を秘めている。我々はともすれば自文化を中心に見据えて他の文化圏を見定めがちであるが、その視点を柔軟にすればどうであろうか。

精神医学者が自分の文化とそれ以外の文化の間で自由に自分の視点を変換することができ、かつ文化そのものが常に生成変化していることを認識していくこと。そのTransculturalな視点を踏まえての実践的な臨床活動のニーズは少なくないし、今後も増えていくであろう。

また日本文化も探求すれば重層性、多様性に満ちており、それが我々の日々の心性の根源になっていることが分かる。「甘え、憑依、対人恐怖」など日本精神医学者の文化的な精神病理学的洞察はよく知られている。バイオロジー重視の現代医学にあって、今なお新鮮で興味に富んだ分野である。

海外駐在員やその家族の適応問題、帰国子女の再適応、日本国内における外国人労働者の適応問題、外国人花嫁問題、国家間・民族間の紛争、それに伴う難民問題、宗教・民族問題などを多方面から専門的に探求するために1993年7月に「多文化間精神医学会」(Japanese Society of Transcultural Psychiatry)が設立された。当医局には海外留学経験を持つ「多文化専門アドバイザー」が常勤医として二人在籍しており、研究活動、学会発表を継続している。

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