研究

研究の概要

鼻副鼻腔炎の難治化因子の解明

2015年に厚生労働省より難病に指定された好酸球性副鼻腔炎は臨床的な所見が明らかにされたが、その発生学的な要因・病因、そして難治化の因子は解明できていない。好酸球性副鼻腔炎は、気管支喘息やアスピリン喘息など好酸球性の炎症疾患を有する患者が多い。気管支喘息やアスピリン喘息も同様に、治療は確立されつつあるが、根本的な病因の解明や発症の要因は明らかになっていない。そこで、我々は副鼻腔粘膜、鼻ポリープを用いて、これら難治性副鼻腔炎の原因を追究し、最終的には気管支喘息、アスピリン喘息の病因に迫りたいと考えている。また、難治化の因子の初期スイッチとしてウィルス感染を予測している。好酸球性副鼻腔炎の悪化時の鼻汁中、ウィルスを同定することで、難治化の因子まで迫りたいと考えている。

上気道、下気道ともに気道の炎症には様々な細胞が関係しており病因の解明を複雑にしている。気道上皮細胞、線維芽細胞などの上皮と間質の細胞、そして上皮-上皮下に浸潤している好酸球、好中球、リンパ球、NKT細胞、マクロファージ、肥満細胞など様々な細胞が複雑に関与しており、最近ではInnate lymphoid cellなども重要な役割を演じているとされる。気道上皮細胞は、呼吸によって外界と初めて接し、特に鼻副鼻腔粘膜上皮はファーストバリアとして重要である。また、バリアとしての機能だけでなく、外界からの刺激に反応し、多様な細胞応答を引き起こす。外的因子によって傷害を受けた気道上皮細胞は、粘膜下に存在する線維芽細胞や炎症細胞を活性化する。最近では上皮細胞や線維芽細胞から分泌されるIL-25、IL-33、TSLPが重要と考えられている。上皮は免疫機構において、重要なバリアの役割を担い、上皮-上皮下の細胞-炎症細胞の関係を調べることは病因を調べる上で、重要と考える。これらのIL-33、TSLP、IL-25はTh2細胞を介することなく、直接に好酸球、好塩基球、肥満細胞を刺激してアレルギー炎症を惹起できることも明らかになっている。次にこれらの反応を誘発する因子は何なのであろうか?細菌、ウィルス、真菌などの感染、Allergenが持つprotease、ATPなどを含めたPAMPs/DAMPsなどが挙げられる。私どもはウィルス感染がトリガーになると仮説を立てている。特に、好酸球性副鼻腔炎も気管支喘息もいわゆる感冒を契機に症状の悪化を認める。ウィルス感染にひき続く細菌感染がさらなる増悪を来すものと想像している。
これらを踏まえ好酸球性副鼻腔炎の発症因子と増悪因子の解明を目指す。副鼻腔炎患者を①健常人(眼窩壁骨折患者など)②喘息非合併患者 ③アトピー型気管支喘息合併患者 ④非アトピー型気管支喘息合併患者 ⑤アスピリン喘息合併患者の5群に分け検討を行うが、全て好酸球性副鼻腔炎の診断ガイドライン(JESREC Study)の4つの重症度分類にも同時に分ける。鉤状突起、鼻ポリープを採取し、それより上皮細胞、線維芽細胞を培養し検討を行う。この細胞をウィルス疑似であるTLR3 ligandであるPoly I:Cにての刺激に加え、ATCCからRSウィルスにて刺激を行う。しかし、好酸球性副鼻腔炎患者や気管支喘息患者では悪化や重症化する。これらの群間でTSLP、IL-25の産生を観察する。また、増悪因子の検討として東邦大学微生物・感染症学講座の協力のもとで、副鼻腔炎悪化時、ないしはESS後の増悪時の鼻腔洗浄液(悪化から2日以内)を用いて、呼吸器感染症の原因病原体に対するmultiplex PCR法を用いた遺伝子検査を行い、増悪因子なりうる感染症を検討する。またこの洗浄液中のIL-33を測定する。これらから、発症因子と増悪因子が同定できる可能性がある。

鼻副鼻腔の機能に関する研究

現在、内視鏡が導入されたことで副鼻腔手術はより安全に確実性を増している。しかしながら鼻・副鼻腔の機能に関してはまだ厳密に分からないことが多い。鼻副鼻腔の機能として、嗅覚、気道としての加温、加湿能、共鳴作用などが知られている。しかし、鼻腔内の流体力学ですら空気の流れが視覚的に表現することが難しいため、完全なる理解には程遠い。副鼻腔手術を行うと睡眠満足度が増すことが知られている。しかし、閉塞性睡眠時無呼吸症の患者においての検討では手術後に無呼吸低呼吸指数が改善するわけではないことは分かっている。それはおそらく副鼻腔手術のより気流が後方まで到達するからと想像される。最後部の副鼻腔である蝶形骨洞の周囲には内頸動脈が走行しその周囲には海綿城静脈洞が取り囲んでいる。これは副鼻腔が脳へのラジエーターとしての機能を持つと想像される。副鼻腔内の温度と術前後での脳の温度変化を検討したいと考えている。

一側性前庭障害患者に対するリハビリテーションの検討

めまい患者に対する治療の一環として、前庭リハビリテーションが注目されています。米国では20世紀より医師と理学療法士が協力して一般的に行われてきましたが、日本では診療点数が得られないため、理学療法士との連携も困難であり、十分に指導できていないと考えます。現状を打破すべく理学療法による効能を理学療法士と連携し、前庭リハビリテーションの効能を定量的・経時的に評価することにより、重要性を確認するとともに柔軟かつ簡潔なプログラムを作成することを目的とする研究です。その上で、めまい患者の増加が見込まれる今後の高齢化社会に向けて、前庭リハビリテーションの保険診療化、発展普及を最終目標と考えています。

上記のように、コントロール群と合わせて前庭神経炎、突発性難聴に伴うめまいなど一側性前庭障害で20~30名程度を対象とし、耳鼻咽喉科受診時(もしくはリハビリ開始時)、退院時(もしくはリハビリ開始1週間後)、初回受診後1、3、6ヶ月で眼振所見等の臨床所見とともに、DHI、HANDS、STAIの質問紙法を用いて、本リハビリにより自覚症状の変化する項目を検討します。
また運動機能をBarthel Indexで自立度を担保した上で、重心動揺系で奇跡長、総面積、Short Physical performance Battery、Functional Gait Index、Time up and goを評価検討します。

代表論文

  1. Matsushima K, Hirose H, Oridate N : Bilateral vocal fold immobility: findings of ten cases and proposed severity grading system. Auris Nasus Larinx (in press)
  2. Matsushima K, Isshiki N, Tanabe M, Yoshizaki N, Otsu K, Fukuo A, MatsuuraK, Watanabe Y Sato K:Operative procedure of anterior commissure for type Ⅱ thyroplasty.J Voice 32: 374-380. 2018
  3. 松島康二:チタン製インプラントを用いた甲状軟骨形成術Ⅰ型についての検討.日本耳鼻咽喉科会 118:1027-1036,2015
  4. Shimura E, Hama T, Suda T, Ikegami M, Urashima M, Kojima H. The Presence of HPV DNA in Neck Lymph Node Metastasis Correlates with Improved Overall Survival of Patients with Oropharyngeal Cancer Undergoing Surgical Treatment. Oncology. 2016 Dec 1. [Epub ahead of print] .
  5. Matsuura K, Wada K, Sasaki Y, Shiono H, Ozawa H, Edamatsu H: Dural Arteriovenous Fistula Presenting with Objective Tinnitus. Toho journal of medicine, 2015.
  6. Arai C, Wada K, Yanagisawa S, Edamatsu H: Hypereosinophilic syndrome which developed after surgery for eosinophilic chronic rhinosinusitis. Toho journal of medicine, 2015.
  7. Inoue A, Wada K, Matsuura K, Osafune H, Ida Y, Kosakai A, Edamatsu H. IgG4-related disease in the sinonasal cavity accompanied by intranasal structure loss. Auris Nasus Larynx. 2016 ;43(1):100-4.
  8. Wada K, Moriyama H, Edamatsu H, Hama T, Arai C, Kojima H, Otori N, Yanagi K. Identification of Onodi cell and new classification of sphenoid sinus for endoscopic sinus surgery. Int Forum Allergy Rhinol. 2015 ;5(11):1068-76.
  9. Wada K, Arai C, Suda T, Nagaoka M, Shimura E, Yanagisawa S, Edamatsu H. Primary adenoid cystic carcinoma of the nasolacrimal duct treated with proton beam therapy. Auris Nasus Larynx. 2015 ;42(6):496-500.
  10. Wada K, Kobayashi T, Matsuwaki Y, Moriyama H, Kita H. Alternaria inhibits double-stranded RNA-induced cytokine production through Toll-like receptor 3. Int Arch Allergy Immunol. 2013;161 Suppl 2:75-83.
  11. Wada K, Matsuwaki Y, Moriyama H, Kita H. Cockroach induces inflammatory responses through protease-dependent pathways. Int Arch Allergy Immunol. 2011;155 Suppl 1:135-41.
  12. Wada K, Matsuwaki Y, Yoon J, Benson LM, Checkel JL, Bingemann TA, Kita H. Inflammatory responses of human eosinophils to cockroach are mediated through protease-dependent pathways. J Allergy Clin Immunol. 2010 ;126(1):169-72.e2.
  13. Wada K, Tanaka Y, Kojima H, Inamatsu M, Yoshizato K, Moriyama H. In vitro reconstruction of a three-dimensional middle ear mucosal organ and its in vivo transplantation. Acta Otolaryngol. 2006 ;126(8):801-10.